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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

SaaS規約ナイトにて

6月27日,クラウドサイン・UZABASE主催によるイベント「SaaS規約ナイト」に参加した。

 

www.cloudsign.jp

 

今回は,SaaS事業者の「サイボウズ」「ユーザベース」「プレイド」の三者の話が聞ける上に,光栄にもパネルディスカッションのパネラーとしてお声がけいただいた。

 

www.cloudsign.jp

 

その結果は,橋詰さんの上記レポートに詳しいし,ツイッターのハッシュタグ #SaaSkiyaku を追ってみても生々しい声があがっている。

twitter.com

 

パネルディスカッションのテーマは,利用料金の変更(値上げ)に関するものだった。ビジネス上の関心が高いトピックであることは間違いないのだけれど,小手先の規約の表現ぶりでなんとかなる問題でもない。このときにもしゃべったけれど,賃貸借契約では100年以上の歴史がありながら,賃貸人からの一方的な賃料値上げについて正解があるわけではないように。

 

SaaSビジネスに関わる人の中でも,多くの人は「SaaS固有の法律問題なんて特にないんじゃないの?SaaS規約ナイトなんて大げさな。」と思っているんじゃないだろうか。確かに,それは半分正解だけれど,その考えではSaaSビジネスにおいても法務は脇役のままで終わってしまう。

 

SaaSビジネス自体も,単にインターネット経由でソフトウェアを提供するだけだから特に真新しいものはないんじゃないの?と思われがちだったところ,セールスの仕組みや,カスタマーサクセスの概念などが進化して,新しいビジネスフレームワークができ上がった。だったら,法務も,利用規約を単なる事業者のリスクヘッジツールとしてだけでとらえるのではなく,カスタマーサクセスの一翼を担うツールとして積極活用すべし,という考えがあってもいいんじゃないの?ということになる。

 

実際に,今回の事業者側登壇者の3名は,表現方法こそ違えど,そういった意識を持ってプレゼンをしていた。せっかくマーケティングやセールスが頑張ってプロダクトのアピールをしている中で,「一切責任を負いません」「保証しません」のオンパレードの規約では一貫性がない。

 

もちろん,セールスでアピールすることと,ディフェンシブな利用規約を設けることは両立するし,会社のディフェンスである利用規約までがウェイウェイしていては問題だ。あくまで,事業方針に沿って,適度なバランスでやりましょう,というだけのことである。

 

なので,SaaS利用規約は,まだまだ各社各様の戦略やカルチャーを反映させる余地が残っているし,それがプロダクトの一部を構成しているんだという意識で取り組めるんじゃないかと思う。

 

ps

SaaS規約ナイトの前身にあたる「利用規約ナイト」には第2回(2013年1月)に参加していたようだ。

masahiroito.hatenablog.com

 

確かこの日に水野祐と初めて会ったと記憶してる。

 

ps2

やっぱりブログを書いていると自分の行動記録,思考記録になるからオススメ。