Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

不正対局問題2

前回のエントリから1か月以上経過したけれど,相変わらず状況はまったく進展していない。


この話題になると,将棋連盟は「第三者調査委員が・・」と繰り返すだけで,それ以外の情報発信をするつもりはないらしい。しかし,竜王戦も第5局が終わり,次局で決着がつく可能性もある。どうやらこのままいくと,竜王戦が終わったあとでの対応になりそうだけれど,それで処分の有効性が否定されたり,「不正行為が存在したと認めるに足りる証拠はなかった」などという判断になったりした場合には本当にどうするつもりだろう。


将棋連盟には「ファン」というものが見えていないらしい。


「そりゃ,お金を払うのはスポンサーなんだから,スポンサーのほうを向くのは当然だろう。ファンは1円もお金を支払っていない人だって多いじゃないか」という声も聞こえてくる。しかし,これは間違っている。スポンサー「だけ」を向いていればよいものではない。なぜ,スポンサーは棋戦にお金を出すのか。ファンが離れた後もスポンサーは賞金を払い続けるのか。


例えばこれ。矢内女流が休場するというアナウンス。

休場期間にかかる女流棋戦の主催各社様、関係者の皆様には御迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解・ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

http://www.shogi.or.jp/news/2016/11/post_1474.html


ファンは視界に入っていないらしい。


また,この問題に関するネットニュース。


スマホ不正疑惑」で騒動続く三浦九段、処分後初の不戦敗が確定 将棋連盟「第三者委の判断を待つしかない」http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1611/18/news148.html

におけるやり取りを抜粋すると,

――そうした情報を連盟のサイトに載せない理由は

逆にその都度掲載する理由はあるのか。

――活動が不透明で分かりにくい。連盟のサイトに週刊文春が報じているようなこれまでの経緯は載せないのか

三者委に任せているため予定はない。

・・。説明して,ファンの理解を求める意識はまったくなさそう。どうしてここまで頑ななのかはわからないけれども。


そんな中,非常に的外れな分析も現れた。


将棋三浦九段の竜王戦騒動、ファンが「ガッカリ」した2つの理由
http://www.sbbit.jp/article/cont1/32946

今回の竜王戦騒動が、将棋ファンをがっかりさせた理由とは、以下の2点である。

(1)将棋ソフトを使われたら、たとえトッププロ棋士でも勝てないことを、トッププロ棋士自身が認めた
(2)プロ棋士でも、不正をしてでも勝とうとする可能性があると、トップ棋士が考えている

・・・。


そんなことにはまったくがっかりしていないし,周り(リアルの知り合いやツイッターのTLなど)でもそんな声をひとつも聞いたことがない。
将棋ファンをがっかりさせた理由というのは,いろいろあるだろうけれど,


(1)棋士生命に影響を来たすほどの重大な処分を,十分な調査,手続も経ないで行ったこと
(2)その点に関する情報開示がほとんどまったくなされないこと


にあるのではないだろうか。


棋士も,この問題直後は,いろいろ意見表明も見られたが,近頃はあまり見られない。「目の前の対局をがんばるしかない」という,事実上の放置宣言はいくつか見たが。


将棋関連,ほぼ唯一の紙媒体となってしまった「将棋世界」でも,この問題については「第三者委員の調査結果が出るまで」という留保付きでダンマリである(ここは連盟の機関紙という立場上,編集部を責められないという面はあるが)。


三者委員会は,将棋連盟における意思決定機関ではない。その報告書を公開すれば足りるというわけではない。委員会の意見を踏まえて,どのような意思決定をするのか,どのようは説明をするのか期待している。不備があったならば,誠実に説明,謝罪をし,処分撤回とともに三浦九段の名誉回復措置をとってもらいたい。