Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

あなたのデータ,「お金」に換えてもいいですか? 日経コンピュータ

プライバシーとパーソナルデータ活用に関する注目の書。


本書に関しては,すでに企業法務マンサバイバルで紹介されているとおり。


CCCの規約変更,NICTの顔画像実験,Suica事件,ベネッセ漏えい事件などの事例を挙げながら,パーソナルデータに関する検討会における検討経緯や,トピックについて丁寧に解説している。今回の個人情報保護法の改正における目玉である匿名加工情報の流通や,個人情報の範囲の拡充(拡大?明確化?)について,法律の専門家でなくとも読めるレベルで説明している本は,今のところ本書しかないだろう。


CCCにしても,Suicaにしても,やろうとしていることが,現行法の枠の下でできないというわけではなかった。本来の趣旨から外れたスキームを採用してしまったり,現行法の解釈の誤解(誤解かどうかは論者によって異なるが)によって,必要な手続を踏んでいなかったりということが問題視された。したがって,こうした事例が問題視されたこと自体は,現行法の不備に起因するものとは思わない。現行法の理解や議論が不十分だっただけだと考える。


今年は,個人情報保護法の大改正が行われる見込み。この点については本ブログでも何度か触れてきたところであるけれど,今回の改正法を理解するには,まず現行法を理解し,そこの問題点(ビジネスの実体に合わないこと等)を理解し,改正案としてどのような議論がなされたのか(改正法を解釈するため)を踏まえることが重要であることを考えさせられる一冊だった。