数日前に発売された題記の書籍。読みかけの複数の本をすべて中断して一気に読み終えた。
- 作者: 天野貴元
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2014/03/12
- メディア: 単行本
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あとがきには,ソチオリンピックでの浅田真央のフリーの演技に感動した,とあるように,まだ書きたての本だ。
サブタイトルのとおり,プロ棋士になる一歩手前のもっとも過酷な関門,「三段リーグ」を約9年に渡って戦い,そして夢破れて去った若者の半生記である。
この本を目の前にして,一つ悩みごとがある。
果たしてこの本を長男に勧めるべきか,勧めないべきか。
あまりにも残酷な現実。厳しい世界。もちろん,そんなことは現役奨励会員であれば誰でもわかっていることかもしれないけれど,この本ほど,生々しく語っているものはないのではないか。これを読むことで,奨励会に入ったばかりで希望的未来しか見てない少年に無駄な不安を与えてしまうのではないか。いや,逆に,そういった現実は早めに認識しておく必要があるのではないか。そもそも,これを読んだとしても,他人のこととして理解できないのではないか。
著者の天野さんのことは,タイトル戦の記録係や連盟道場などで何度か見たことあるし,ブログもときどき読んでいて知っていた。そして,奨励会を年齢制限により退会したことも,昨年,退会直後に衝撃的な危機に襲われたことも知っていたので,本書が出たことを知ったときは,応援する気持ちも込めてさっそく買った。
小学生名人戦で準優勝,奨励会に圧倒的な成績で入会するなど,輝かしい小学生時代。寄り道したとはいえ,スピード出世である17歳で三段リーグ入り。順調な修行生活前半と,三段リーグで足踏みしてしまう9年間の後半のコントラストも生々しい。
いろいろと感情移入せざるを得ない一冊だった。