Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

エクスターンシップ生を受け入れた

今年初めて,母校LSのエクスターンシップ生を受け入れた。


エクスターンシップという言葉は,ロースクールにおいては,夏休み等を利用して法律事務所,官公庁,企業等の実務を見学,体験するプログラムという意味で使われる(ほかで聞いたことない言葉なので)。母校では2年目(既修者は1年目)の夏休みに1週間で行われる。引受先リストの中から,原則として学生の希望を考慮して決められる。


自分がエクスターンをやったのは2005年夏だから8年前。ブログを振り返ってみたら,当時のことが書いてあった。

http://d.hatena.ne.jp/redips/20050822/1124711155
http://d.hatena.ne.jp/redips/20050823/1124805570
http://d.hatena.ne.jp/redips/20050825/1124976575
http://d.hatena.ne.jp/redips/20050827/1125151199


引受先リストにはなかったので,興味があった事務所に自己開拓して押しかけていった。なつかしい。


ところで,最近では引き受け先が少ない,という話を聞いたので,試しに手を挙げてみたら,1名,ピカピカの若者男子が応募してくれた。非常に熱心な学生で,事前に質問が来たりするので,事務所の判例研究会などにも来てもらっていた。


修習生と違って,エクスターン生は微妙な立場だ。修習生の場合,裁判所にはほぼフリーパスで同席させてもらえるし,相談,打ち合わせなども,割と「弁護士になるための研修なので・・」などと言って同席させることをお願いしやすい。自分のときは,そういう事情もあって,一度も依頼者と接することはなかったが,どうせなら生で接したほうがよいだろうと,可能な限り依頼者や相手方に「これこれこういう件で同席させていただいてもよろしいでしょうか。その趣旨は・・。秘密保持の誓約書も差し入れてもらっています。」と了解を求めた。


その甲斐あって,1週間という短い期間であったが,かなりいろいろな体験ができたのではないだろうか。法廷,弁論準備のほか,打ち合わせにもいくつか出てもらったし,海外との電話会議,国内の電話会議での交渉にも出てもらった。今,関わっている出版企画の編集会議にも来てもらった。ただお客さんとして見学するだけでなく,簡単な書面(日・英)を書いてもらったり,契約書チェックもしてもらった。


ラッキーな裁判官にもあたった。知財高裁での審決取消訴訟の第1回弁論準備では,開始とともに「今日はロースクールの学生がいるのですね」と口火を切り,手続をかなり丁寧に説明しながら審理,進行していただいた。期日終了後には,「もう少し時間があれば,いろいろ話しましょう」といって知財高裁のパンフレットを持ってきてくれて,知財事件の話,裁判所の話などをしていただいた。


彼のエクスターンシップはとても充実したものとなったと思う。上記の裁判官の例は運が良かったということになるが,事務所の他の弁護士までも,いろいろと協力してくれたのは,本人の熱意,やる気に依るところが大きい。もっと見たい,知りたい,何かないか・・という「意識高いアピール」だけでは足りない。単に情報を受け取りっぱなしではなく,質問したり,意見を述べたりする姿勢が重要だ。


考えてみれば,これはエクスターンシップに限ったことではなく,修習生についても同様だ。事務所に入った新人弁護士であれば,コストも発生する以上,教育し,仕事を割り当てざるを得ないものの,修習生を引き受けるのはただのボランティア。引受先をモチベートさせるのは本人の意欲,行動なんだろう。