Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

一橋大学法科大学院同窓会の設立

昨日,一橋大学法科大学院同窓会の設立総会・懇親会が行われた。


このブログを始めたのは,2005年3月。私が,法科大学院の1年から2年に上がろうとするときだった。当時は,新司法試験が一度も行われていなかった頃なので,司法試験,法曹養成全体について不透明感が満載で,法科大学院生の誰もが不安を抱えていた。自分の法科大学院生活をこのブログで開披し,他大学の様子を法科大学院生ブロガーから垣間見ることによって,その不安を緩和させていたものだった。


一橋大学法科大学院は,学生のレベルが非常に高かった。在学中,司法試験とは,かくも厳しい戦いなのかと思っていたが,ふたを開けてみると,全国でもトップレベルの環境だったのだから当たり前のことだった。たまたま,一橋大学法科大学院は,毎年のように司法試験合格率トップを維持し,業界の中でも注目を浴びている。おそらく,先生方も誇りを感じていると思う。しかし,悲しいかな,卒業生のほとんどは,この結果については「大学のおかげ」ではなく,「自分たちががんばったおかげ」「仲間とともにがんばったおかげ」だと思っている。しかも,数%の合格率の違いは,合格者1,2名で逆転する程度の差であるから,合格率が高いからといって,卒業生個人が嬉しいと感じるわけでもない。


大学は,一貫して「司法試験の合格は通過点。10年先,20年先にリーダーシップをとっていく法律家を要請していく」と高い目標を掲げ,学生にも,対外的にも,そのように説明していた。また,大学ホームページにも「ビジネス法務に精通」「国際的な視野」「人権感覚に富む」法律家を要請するということを目的に掲げている*1。しかし,目の前に立ちはだかる司法試験という壁しか見えない学生にとって,その崇高な目標はほとんど響いてこない。しかも,卒業してしまうと大学と接点をもつ卒業生はほとんどいない。それでどうやって「10年先にリーダーシップをとる」「ビジネス法務に精通した」「国際的な視野をもつ」卒業生を生み出したかどうか,という効果が測定できるのか,疑問を感じていた。


たまたま私は,卒業後,学習アドバイザとして,在校生・受験生のゼミをしており,学年を超えた知り合いができた。そこで,信頼できる後輩に「他大学でも同窓会があるらしいし,うちでもやってみようか」という相談を持ちかけ,各方面の協力を仰ぎ,昨日の設立総会開催に至った。


卒業生(中退した人も含む。)は,2006年卒の1期既修(入学時約70名)を筆頭に,今年の試験を受けたばかりの卒業生まで,8学年,700名くらいいる。各学年の幹事を決めた後は,学年単位で連絡を取って,参加者を募った。私の代は,卒業後,長らく同期会のようなものをやっていないので,そもそも連絡先が分からず,私の交流範囲も狭いので,苦労した。それでも,結局,60名強(全体で約100名)と連絡が取れ,35名くらい出席した。山口,大阪,名古屋など,遠方からの参加者も多かったのには感激した。裁判官や大手事務所の弁護士は,留学中の人も多かった。


他の学年も,参加人数にばらつきがあったが,平均して30名出席し,教員合わせて全体で約250名が如水会館に集まった。裁判官,検察官,弁護士の実務家教員の出席率が高かった半面,学者教員の出席者が多くなかったのは,上記のような疑問が出発点だったことを思うと,やや残念ではある。


僭越ながら,言いだしっぺということで,挨拶をさせてもらった。先生方には上で述べたような疑問を伝え「卒業生と交流して,理念が実現できているか感じてもらいたい」と注文を出し,同窓生には「合コンのきっかけ作りでもどんな目的にでもいいから,次からも気軽に来てほしい」とお願いした。なお,会の進行については,ひと悶着あったが,ここでは触れない。


基本的には同期どうしが集まって旧交を温めあうという場だったが,随所で,学年を超えて輪ができたり,先生を囲んだりする場面が見られた。私自身も,いつも「みんなの独禁法*2で勉強させていただいている植村先生や,先日書いたBusiness Law Journalのシステム開発契約の特集で,アジャイル契約のパートを書いた梅本弁護士とあいさつさせてもらうなど,新たな出会いを得られたことが収穫だった。自分が法科大学院入学当時に参加した大学ジャズ研で,当時18歳だった大学1年生と一緒にバンドを組んだりしたが,彼が法科大学院を経て今では修習生になっていると聞いて,時間の流れを痛感した。


確かに,いろいろと面倒なことはあったけれど,本当に多くの人から,設立,開催について感謝の言葉をいただいた。今まで,1日にこんなに多くの人にお礼を言われた日はないんじゃないか,というくらい。スムーズな立ち上げと進行ができたのは,後輩の幹事が尽力してくれたお蔭なので,お礼を言われるのを独占するわけにはいかない。幹事のみなさんとは,慰労会を開催し,今回の反省点を踏まえ,来年以降に生かしていきたいと思っている。