Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

利用規約ナイトVol.2に参加した

1月16日,題記のイベントに参加した。第1回が昨年3月に行われて,好評だったようで,その続編とのこと。


参加者は,ウェブ系サービスの技術,事業企画,法務のほか,弁護士の数もかなり多く,全体で80名くらいだっただろうか。普段の弁護士会での研修などのような重さはなく,かといって,ベンチャーの集まりのような軽さもなく,ほどよい秩序の中で行われた。


登壇者とその概要は,hashizumetakujiさんのブログで説明されているとおり(下記リンク)。感想も私とほぼ同じ。利用規約は弁護士に見てもらえ!専門の弁護士を探せ!費用はケチるな!という話が事業側から出されたときには(ヨシヨシ)と心の中でつぶやいただけでなく,思わずツイートしてしまったけれど(笑

http://blog.livedoor.jp/businesslaw/archives/52299802.html

overbody先生のブログも参考までに。
http://blog.livedoor.jp/overbody_bizlaw/archives/6869884.html


自戒を込めて書くと,利用規約というものを事業運営者も法務も,外部弁護士もややナメている感があり,こうして多様な立場の方の話を聞いてみると,考え直させることが多い。


利用規約というのは,名称こそ「利用規約」ではあるが,(一定の条件を満たせば)事業者とユーザとの間の契約にほかならず,法的拘束力を有する。だから,弁護士の立場ではどうしても「裁判所目線」でチェックし,将来紛争になった場面を想定して消費者契約法がどうの,判例がどうの,準則がどうの,という観点からの指摘にとどまりがちである(もちろん,こうした視点が必要なのは当然)。


しかし,利用規約がもっとも参照され,効力を発揮するのは,ユーザからの問い合わせ,クレームなどの段階。さらには,ユーザと事業者との直接やり取りの場面だけでなく,第三者同士(例えばツイッターや,2ちゃんねるなど)でのやり取りの場面でも,よく指摘される。おそらく訴訟になって裁判所に利用規約が提出される場面の100倍は多いだろう。


そう考えると,訴訟で勝てることだけにフォーカスを当てればいいのだろうか。それよりも,ユーザからの問い合わせに対して,わかりやすく納得してもらえるように,クレームが30分ではなく5分で済むようにしたほうがよいのではないだろうか,という視点も出てくるはず。さらには,利用規約という形で小さな窓あるいはリンク先に長い文章を表示させるだけではなく,イラストなどを用いて全体的にわかりやすいものにすべきではないだろうか。そのイラスト・説明文と利用規約の文言の不整合が生じないようにすべきではないだろうか・・と,考えるべきことはどんどん増えていく(大手のしっかりした事業者は,こうした姿勢で利用規約ガイドラインを定めている)。


平成24年11月に改正された準則でも,

具体的な事情によっては、事業者には取引上の信義則により消費者が意思決定をするにつき重要な意義をもつ事実について適切な告知・説明の義務を負う場合があることから、サイト運営者がサイト利用規約に記載された重要な事項につき十分な説明を行わず、これにより利用者が取引条件を誤認して契約した場合には、損害賠償責任が課せられたりサイト利用規約の有効性が制限されたりする可能性がある。

と言及されていることに注意が必要である。


そういう意味では,サービス設計の段階から,利用規約を作り上げていくことが必要だろうし,サービスの中身も知らないまま法務担当者,弁護士が利用規約をドラフトして,事業サイドもそれに対してあまりチェックしないというのは大きなリスクだということを改めて感じた夜だった。


次は,利用規約の一部といえば一部だが,プライバシーポリシーナイトとでも銘打って,ホットトピックであるユーザ情報の取得・利用(マーケティング目的等の利用)についてフォーカスしたイベントであってもよいのではないか,と思った。この問題は,ご存じ,舌鋒鋭い論客が多数いるし,炎上リスクも極めて高いうえに,危ない橋を渡っている事業者も多いし。


イベント後の交流会では,新たな人脈作りもできて,非常に有意義だった。このイベントを企画・運営していただいた方々,どうもありがとうございました。