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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

カード合わせにあたらないの?

コンプガチャ問題は,消費者庁の「エア規制」*1により,決着へ向かっているが,次男は今,ある景品類に夢中だ。


一つは,「ゴーバスターズチョコビスケットボール」。この3月から始まった戦隊シリーズの菓子。

http://syokugan-ohkoku.com/item/order-bandaicandy/gobusters-choco/order.php?Code=7661


にあるように,パッケージ内についている応募カードを24個集めて送ると,「もれなく」「モーフィンブレスウォッチ」がもらえるというもの。4月から販売が始まった菓子で,締切が6月末。3カ月で24個集めようと思ったら,1週間あたり2個も買わなくてはならない。


おかげで,こんな状態。


コンプガチャの規制が問題となった際,「チョコボールのおもちゃの缶詰も銀のシール5枚でもらえたんだから,違法な景品である『カード合わせ』にあたるのではないか?」という声があったが,このゴーバスターズチョコも同じ仕組み。もちろん,コンプガチャと異なり,こちらは「カード合わせ」を理由として違法とならないことに争いがない。


その理由は,すでに各所で解説されているので,あまりクドクドとは書かない。そもそもカード合わせを禁止する根拠は,景表法3条に基づく「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」*2で,

5 前三項の規定にかかわらず、二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供は、してはならない。

としているところにある。確かに,パッケージ内の応募カードは「符票」になるが,「異なる種類」のものではないので, ここにあたらない。なお,例えば,「1点券」「2点券」などの「異なる種類」で合計24点集めるという形式であったとしても,「カード合わせ」には当たらないとされている*3。ただし,通常の懸賞としての規制(たとえば,景品類の最高額が取引の価格の20倍以下にすべきこと等)にはかかることに要注意。


もう一つ夢中になっているのが,缶コーヒーのジョージア・ヨーロピアンの名車プルバックカーを揃えて鈴鹿サーキットを完成させるキャンペーン*4


これは,最近よくある缶コーヒーにミニカーのおまけがついているもの。オマケの袋は透明で,中の車種がわかる。オマケにはミニカーだけでなく,サーキットの一部が入っていて,全種類(8種類)揃えると,ミニカーを走らせるサーキットが完成する*5。我が家でもとうとう昨日,全車種制覇し,オーバルコースが完成した。


このミニカーは,プルバック式(チョロQ式)になっていて,シャーシの裏側の突起部分をサーキットの溝に合わせると,うまく走る仕組みになっている。サーキットの一部しかないと,ほとんど用をなさない。


さて,こちらは,全種類揃えたくなるという意味で,「コンプガチャ」と同様,禁止されている「カード合わせ」に該当するのではないか?との疑問も生じそうである。なお,結論から言えば,この仕組みも「カード合わせ」を理由に禁止されることはない。


というのも,先に挙げた運用基準(通達)によれば,「カード合わせ」に当たらない例として,

異なる種類の符票の特定の組合せの提示を求めるが、取引の相手方が商品を購入する際の選択によりその組合せを完成できる場合

としており,中身がわかるケースは「カード合わせ」に当たらないことが明記されている。また,全車種揃えたところで,サーキットが完成するだけであって,「異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞」ではないので,そもそも「カード合わせ」にあたらないと考えられる。


では,仮にこのオマケが中身が見えない状態で提供されていたとしたらどうだろうか。


やはり上記のとおり,そもそもサーキットが完成するだけで,新たな景品類が提供されていないし,「符票の特定の組合せを提示させる方法」でもないので,問題ないようにも思える。しかし,「カード合わせ」を禁止する趣旨は,欺瞞性が強く,射幸心を煽るためだとされていることからすると,この方法でも,ついつい揃えたくなって無駄な購買を促進するという意味では,同じように規制されるべきではないか,という問題提起はありうる。


今回のコンプガチャ問題は,有力事業者による自主規制という形で収束しそうだが,仮に「レアカード」を提供する方法ではなく,コンプしたらプレイヤーの能力値が上昇するとか,パズルのようにカードを並べて表示すると大きな一枚の絵のように見えるといった方法を導入したら,どうだろうか。


コンプガチャでも,レアカードは,物ではないが「経済上の利益」の一種である「役務」だと考えられた。そうすると,上記のような方法(能力値の上昇等)でも,やっぱり「経済上の利益」を提供するものだと考えられるのではないか。

*1:企業法務戦士さんのブログの5/10エントリから拝借。

*2:http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_8.pdf

*3:「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_23.pdf

*4:もうこのキャンペンは終了しているらしく,公式サイトはない。こちらのブログに詳しい。 http://ameblo.jp/choroq-tsushin/entry-11234838816.html

*5:車種とサーキットの部品は1対1の対応であり,全車種揃えれば必ずサーキットが完成する。