弁護士業界の近未来を描いた小説。非常に面白かった。
- 作者: 鈴木仁志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/03/15
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 73回
- この商品を含むブログを見る
この本は実は10年も前に出されており,それが10年を経て,先月になって文庫化される際に加筆修正がなされたという。どの部分が加筆修正されたのかわからないが,現在は,10年前に予想された近未来(設定は2020年代)に向かって確実に進みつつある。
法科大学院制が導入され,司法試験には簡単に合格できるが*1,弁護士が増えすぎて就職先がなくなり・・というところまでは確実に当たっている。弁護士業務を市場開放した結果,日本企業同士の契約ですらも,準拠法がニューヨーク法となり,英文契約となり,日本人弁護士はNY法弁護士の手下となって翻訳マシーンとなる・・というところは微妙であるが。外資系の事務所の内部についてはよくわからないが,近い雰囲気はあるのだろうか。
さらには,法律事務所の「営業」とは,弁護士自身が,駅前,病院前でティッシュを配るという姿が描かれているところも衝撃だ。今は笑えるかもしれないが,10年前は,ほとんど法律事務所の広告がなかったことを思うと,少しずつこの小説で描かれている方向に進みつつある。
筆者の鈴木弁護士は,これが初めての小説だと思われるが,ストーリーとしても,表現としても引き込まれ,一気に読み終わった。
*1:小説中では,7,8割合格できる,ということになっており,現状とは大きく乖離している。しかし,その差が本書の全体のストーリーに与える影響は軽微である。