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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

最高裁の違憲判決

本屋で何気なく取った新書。これはロースクール生,法学部生にお勧め。


最高裁の違憲判決 「伝家の宝刀」をなぜ抜かないのか (光文社新書)

最高裁の違憲判決 「伝家の宝刀」をなぜ抜かないのか (光文社新書)

著者は,新聞記者であり憲法の研究者の山田隆司氏。


通常の憲法の教科書と異なるのは,違憲判決(法令違憲はすべて,適用意見についてもほぼすべて)を,制限された権利(根拠となる条文)ごとに整理するのではなく,時系列に整理していること。その当時の時代背景や,なぜその長官が指名されたのかといった政治的背景などを軸に説明している。


事案の説明や,争点,判旨の説明は,一般向けに書かれた新書であるから,わかりやすく(とはいっても,法律の勉強をしたことがない人にとっては難しいと思う),憲法の基本的な講義と並行して読み進めると,違憲審査について理解が深まると思う。


私がロースクールに入った時,入門的な科目として「裁判法」というものがあった。これはオムニバス講義で,公法系,民事系,刑事系からそれぞれ3回ずつくらいの講義だった。公法では,いきなり「憲法の争点」の一部のコピーが配られて「司法積極主義」の説明から始まり,「法律上の争訟」や例外としての「住民訴訟」の説明が行われたように思う。今振り返れば,そのコンセプトはわからないわけではないが,当時は自分がドロップアウトする予兆を感じたものだった。


話がそれたが,本書は,そういう公法,特に憲法嫌いにならないようにするためにも,入門書と共に読むのに最適なのではないだろうか。
(この種のことをツイートしたところ,相当な勢いでRT,お気に入り登録された。おそらく,自分のツイートとしては最高数だったと思う。)