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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

ライバルという感覚 〜小学館学年誌杯争奪全国将棋大会

小学館学年誌が相次いで休刊されるという話があり,開催も危惧されるところであったが,今年も題記の大会が開催された。


学年別にチャンピオンが決まる唯一の大会で,地区予選はないが,全国から腕自慢が集まる。さらに,各学年で1位,2位になると,合計12人でのグランドチャンピオントーナメントが開催され,そこで1位,2位になれば,小学生名人戦東日本大会の招待選手となることができる。


これに参加するのは三回目。

1年生の時は優勝
http://d.hatena.ne.jp/redips/20091206/1260108425

2年生の時は,トーナメント1回戦負け(ベスト16)
http://d.hatena.ne.jp/redips/20110117/1295209738


長男の学年は,強い子が多く,かなり激戦区となっている。受付の表を見たところ,各ブロック(4人×8ブロック)に四段,三段が散りばめられていて,長男のブロックは,確か三段,三段,初段,1級となっていた。この4人で上位2人に入らなければならない。


この大会,参加には抽選があるようだが,今年は強豪が抽選に漏れたという話をあまり聞かず,実際に強い子ばかりが集まっている。事実上の選抜大会のようなものかもしれない。


相変わらず,息子の将棋を見ていられない私は,適当に時間をつぶしていたところ,予選を2連勝で通過し,トーナメントに進んだ。トーナメントでも,少し危ないところはあったようだが,連勝して,ベスト4まで来た。


ここに残った長男以外の3人は,東京のS君,神奈川のK君,愛知のF君。東京23区の名人戦代表にもなり,長男が一度も勝ったことがないS君。同じ道場の仲間で,何百局も指したことがあるK君。そして,今回最大の優勝候補とされていた倉敷王将戦低学年優勝者のF君(東海研修会Bクラス)。


そのF君と準決勝で対局することになった。初手合い。どのくらいの実力差があるかわからないけれど,気合を注入。


だいぶ長い将棋に思えたが,勝ち。先に勝ち名乗りを上げたK君と,同門・同学年での決勝を戦うこととなった。大会での対戦成績は2-0(JT杯準決勝,京急準々決勝)だったが,練習対局ではかなり拮抗している。


たかが持ち時間10分30秒の将棋だが,これもかなり長い時間に思えた。結果は負け。最近の大会成績でもK君は好成績を続けて残しており,勝負強さを見せた。


1位で通過すれば,グランドチャンピオン戦で準決勝まで5,6年生とあたらないので,できれば優勝しておきたかったところだったが,そんなことを言っても仕方ない。1年生には勝ったが,6年生には負けた。かなりの実力差があったようだ。


結局,今回は,6年生同士が決勝を戦った。特筆すべきはK君が,4年生,5年生を破って全体で3位に入ったこと。小学生名人戦の出場資格がない6年生に代わって東日本大会の招待選手となった。


この大会は,ほかの大会と比べて子どもたちの涙が目立つ。やはり同じ学年という枠内で争うだけに,よりコンペティティブで,負けたくない気持ちが強いのだろう。特に三位決定戦は,互いに直前に負けた者同士で戦うので,涙を拭きながら対局している姿も見られ,端で見ている私が詰んでしまいそうだった。


ところで,長男とK君。この二人は文字どおりのライバル。将棋を始めた時期が早かったこともあって,当初は長男が勝ち続けていたが,じわじわと力をつけて,今では実力が伯仲する。


子どもは正直なもので,長男はK君の活躍が悔しいらしい。この大会に限らず,K君が大会で強敵に勝ったという話をすると,露骨に悔しがる。むかし読んだ瀬川四段の自伝「泣き虫しょったん」でも,瀬川少年は,ライバルの渡辺少年が負けることを期待したことを書いていたが,この二人はそれに近い感情を持っているのかもしれない。


それ以外の同学年の少年が,どこでどのように活躍しようとも,それは特に気にならないらしい。


ライバルというのは,単に技能,成績を競い合うだけでなく,ライバルの活躍を悔しがり,ときには妬むような関係なのだろう。才能,自分自身の努力や,よい指導者のほか,こういうライバル関係が成長の糧になるのだろう。


自分は今まで,そういう意味でのライバルがいたという記憶があまりないので,少々うらやましくもある。