Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

暗いニュース続く

最近,法曹養成や,新人法曹に関連していくつかのニュースが出ている。


いずれも暗いニュースばかり。


8月8日
法科大学院 初の統合 桐蔭横浜が大宮「吸収」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011080902000015.html

桐蔭横浜大横浜市)と大宮法科大学院大(さいたま市)は八日、法科大学院を統合すると発表した。法科大学院同士の統合は初めて。大宮は募集を停止し、事実上、桐蔭横浜大が「吸収合併」する。来年四月から作業を始め、二〇一六年三月をめどに完了する。

(声明文)
http://www.cc.toin.ac.jp/univ/law/pdf/integration.pdf


いずれこういうことが起きることは予想されていたので,衝撃というほどでもない。これまで,法科大学院同士で様子見をしていただろうから,この統合によって,再編の動きが加速しそうだ。


ただ,両大学院ともに,夜間講座を開設するなど,社会人からの法曹転入を積極的に支援していただけに,そうした大学院が真っ先に統合になるというのは,制度理念からしても,極めて皮肉なことだ。


8月4日
■修習生の給費制打ち切り=11月から貸与制−政府
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201108/2011080400377

政府は4日午前、法曹養成改革に関する関係省庁副大臣らの検討会議を法務省で開き、司法修習生に月額約20万円を支払う「給費制」を打ち切り、11月から無利子の「貸与制」に移行する方針を確認した。


昨年は,奇跡的に1年延長されていたわけなので,今年の打ち切りは予想どおりということになる。そもそも,我々(2004年入学者)のころから,修習中は給与制でなくなるといわれていただけに仕方ない。


無利子で,返済に関する各種措置が出来るとはいえ,これにより法曹になるための経済的負担がさらに高まったことは明らかだ。


8月3日
司法修習生の43%「就職未定」=過去最悪、不況など影響―日弁連
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110803-00000103-jij-soci

日弁連は3日、2010年の新司法試験に合格した司法修習生のうち過去最多の43%が、7月時点で「就職先が未定」と回答したとする調査結果を公表した。
(略)
同様の調査は4年前から実施しており、7月時点の未定率は8%、17%、24%、35%と年々悪化していた。


修習生は,11月に2回試験を受けて,12月後半(実質的には翌年1月)から法曹として実務に就くので,7月時点で「未定」だったからといって,無職が確定しているわけではない。現に,昨年同時期の調査では,35%だったというが,最終的に就職できなかった人の割合は,この半分か3分の1程度だろうと思う。とはいえ,悪化傾向にあることは間違いない。


また,内定を得た修習生の待遇面も(データでは見られないが)年々悪化しているようで,1年合格が遅れれば,それだけ不利益が大きくなることは間違いない。なので,「受け控え」など呑気なことを言っている余裕はないはず。


内定先が未定の率が40%というのは,就職氷河期における一般大学生の率と大差はないということになる。学生時代の楽しみを我慢し,通常の学生よりも2年ないし3年長く苦労して勉強し,ようやく法曹資格を得られるところまで来ても,就職におけるプレミアムはないということになる。待遇面も,一部の大手渉外事務所などは,通常の社会人の初任給よりはまだまだ高いが,通常の法律事務所では,ほぼ同じ(むしろ,会費負担や社保等を考慮するとマイナスともいえる)。


資格を得るまでの経済的負担が増し,さらには,その先に得られる「果実」の期待値も減っているとなれば,この職業を目指そうとする人が減少するのも当然だろう。