前回からの,つづき。
【売上(収入)金額等(問28A)】
確定申告書の売上金額の合計について。平均は3304万円。かなり高い印象を受けるが,中央値は2112万円。一部に,売上の多い層がていて,平均を引き上げている。250万円刻みの最頻値でみると750万円から1000万円になるので(全体の10%弱),弁護士業界においても格差社会になっている。この傾向は,売上に限らず,所得金額についても同じことがいえる(所得の平均は1471万円,中央値959万円,最頻値750-1000万円)。
勤務弁護士の給与収入という点で見てみると,平均値618万円,中央値620万円。これから先は独立していくことが難しいことを考えると,(苦労したり,お金がかかる割には)決して経済的に恵まれた職業とはいえないだろう。
このパートは,本書において最大のページ数を割いていて,細かく売上や経費の内訳を分析しているが,飛ばす。
【弁護士としての職業生活の満足度(問30)】
定性的な質問に移る。全体としてみると,満足(74.0%)が,不満(10.0%)を大きく上回っているが,経験年数別でみると面白い。
5年未満 満足(65.7%),不満(13.8%)
10年未満 満足(69.0%),不満(14.2%)
中略
40年以上 満足(87.9%),不満(0.4%)
となっていて,経験年数の積み重ねとともに,満足度が増す。これは過去のデータとの比較がないのでわからないが,若いうちは苦労するが,我慢して続けていけば満足する,ということを意味するようにも思えるが,他方で,競争が激しくなった現在に弁護士になっても満足できる可能性は低い,ということを意味しているようにも思える。
【未既婚率(問50)】
配偶者の仕事,という質問が興味深い。
男性の場合,妻が,裁判官,検察官,弁護士(法曹三者)である割合は5.3%に過ぎないが,女性の場合,夫が法曹三者である割合は50.0%(!)にもなる。うち,ほとんどが弁護士(46.8%)である。
若い世代ほど,女性比率が高いので,今後もこの傾向が続くかどうかわからないが,現時点で女性弁護士の夫のほぼ二人に一人は弁護士だというのは驚き(予想どおりといえばそうかもしれないけれど)。
その他にも興味深いデータはあるが,ひとまずこのシリーズはここでおしまい。