少し前に読んだ本について。
- 作者: 山田 順
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/03/17
- メディア: 新書
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書店でこの本を見かけたとき,帯には「某大手出版社が出版中止した禁断の書」とあり,手に取ってしまった。
全体として,電子出版の未来は幻想にすぎず,ゲーム産業,音楽産業と同様に出版産業もデジタル化とともに衰退する,という論調である。全体的には危機感を煽っているような印象も受ける。
著者が,長年出版業界で活動していたために,利用者視点ではなく,出版社視点であるという点も感じるところであるが,パラダイムシフトに対して懐疑的である,コンサバである,というだけの内容ではない。
「誰でも自費出版の衆愚」という章に代表されるように,雑多な低レベルの「クズ原稿」が氾濫することによって名作がどんどん埋もれてしまうということなどは,著者の体験に基づく主張だ。比較的データや事実に基づく分析も行われている。
文章は読みやすいので,集中して読めば,すぐ読み終えられるはず(私は通勤電車内でタラタラ読んでいたので,結構日数がかかったが)。出版事業の今後を考えるきっかけにはなる一冊だ。