Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

NDAについて(2)

前回からの続き。もうしばらく総論的な話が続く。


これまで,NDAに関する相談で,今まで私が受けたものの例としては,次のようなものがある(事案はデフォルメ。契約のレビューは除く。)。いずれも当事者間では何らかのNDA*1が締結されていた。

  • 互いに技術情報を交換していたが,本格的な共同開発契約を締結するには至らなかった。しかし2年後,相手方が,当社が開示した情報に基づいて特許出願していることが判明した。
  • システム開発を委託し,業者に製品価格設定方法について情報を開示した。ところがその業者は,後にこの価格設定方法を組み込んだ機能をパッケージ化して販売し始めたことが判明した。
  • システム開発を委託したところ,紛争になり,訴訟も視野に入れている。相手から納入された仕様書等の品質が悪いことを客観的に判断してもらうために,同業者に見せて鑑定してもらっても問題ないだろうか。


通常は,NDA(または他の契約における秘密保持条項)で問題が起こるとはまずない,と軽く考えがちなところだが,上記のような問題が起きたとき,NDAの条項がどうなっていたか,また,当該情報がどのように扱われていたか,当該情報の性質はどうか,というところを慎重に検討しなければならない。したがって,「たかがNDA」と考えがちなところであるが,やはり,○○基本契約,○○共同研究開発契約などと同様に,文言の内容や,締結後の運用についてケアすべきところはいくつかある。もっといえば,そもそもNDAを締結する必要があるかどうか,ということも考えるべきポイントである。


私がNDAを見かけるケースとしては,(1)研究開発系の業務で,技術情報(またはサンプル,試作品)のやり取りを行う場合,(2)システム開発コンサルティングなどの業務委託において,委託者の情報を開示する場合(またはその逆),(3)M&A含む投資案件の準備段階において,ターゲットとされる会社またはFAがターゲット会社の情報を開示する場合,などがある。ここでは,主に私が取り扱うことが多い(1)と(2)を念頭においてもう少し掘り下げてみることにする。秘密保持という観点では,会社と従業員・取締役の間でも誓約書等によって秘密保持義務,競業避止義務を負わせることがあるが,その点はここでは割愛する。

*1:秘密保持契約という表題でなくとも,秘密保持条項が含まれていた。