Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

40歳男子,すべてを語る!!

・・といっても,私のことではなく,ある書籍の紹介(まだ私はギリギリ40前だし)。


ロースクール、新司法試験をかけぬけた 40歳男子、すべてを語る!!」
弁護士 鈴木孝司著 辰巳法律研究所

http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1106009306

(いつものAmazonへのリンクをはって紹介したいところだが,まだ発売日前で,登録されていない。予約もできないのだろうか)


この本の著者,鈴木さんとは修習が始まる少し前に,法学セミナー誌の座談会企画で初めて会って,その後,偶然同じ修習のクラスということが判明した。修習中はもちろんのこと,修習が終わった後も,ときどき会ってたくさんの話をする。自分よりも年上なので,失礼かもしれないが,親友といってもよい方だ。


弁護士登録をした後,何やら本を書いているらしい,という話は聞いていたが,発売少し前に1冊頂戴した。


内容をひとことで言うならば,「超」長編の合格&修習体験記。おそらく後にも先にも,ここまで分量の多い詳細な体験記が出版されることはないだろう。


私は,修習中に彼のロースクール時代やその他バックグラウンドをたくさん聞いており,また,自分もシンクロして同じ時期をロースクール→新司法試験→修習と過ごしてきただけに,本人を思い浮かべつつ自分の経験を思い浮かべながら読み始めたら止まらなくなった。


ロースクールに入学してから実務に出るまでの長すぎる4年9カ月について,ここまで詳細(&くどく)に書かれた記録は,貴重な資料になるといえる。随所に表れてくる不安,焦燥については共感できる部分も多いし,それでいて楽観的に,楽しく過ごし,しかも勉強に対する真摯な取り組みについても,よくわかる。


体験記なので,時系列になっているとはいえ,体系的に書かれたものではないが,巷のブログよりは,まとめて書いただけに,統一感があり,しかも文体がやわらかいので読みやすい。


というわけで,これからロースクールに入ろうとしている方(特に現社会人)や,現役ロースクール生にはお勧めの一冊だといえる。


しかし。敢えていくつか言うならば・・


長い。私は,彼の人となり,境遇をある程度知っていて,自分も同じ体験をした者だからスラスラ読めるが,そうでない読者にとっては,少々クドいかもしれない。まあ,でも一気読みする必要もないので,気になる部分だけ読めばその点は解消できるかもしれない。


ターゲットが狭い。彼は社会人出身&他学部ロースクール生ということで,本来は,新制度の申し子のはずなのだが,今となっては完全に絶滅危機種だ。必ずしも属性が一致する必要はないが,かなり環境依存の記述もあるので,境遇がまったく異なる現役法学部大学生(しかもこれが今のデファクト)にどこまでリーチするか。


時機に少々遅れた。忙しい仕事の合間に書いたことや,修習中は専念義務との関係もあって作業ができなかっただろうことを考慮すると,よくもここまで仕上げたという気がするが,その結果,発売が弁護士登録から2年以上経過した今になってしまったのが惜しい。今はまだ制度の変動期なので,1年ごとに状況が変わる。我々がロースクールに入ったのはもう7年前。試験の仕組みや,就職難の状況も変わりつつある。そう考えると,一刻も早くこの情報を世に出しておけばよかったなと思う。


最後にいろいろ書いてしまったが,ダメな本か,というと,そうではない。親しい友人の本だからこそ,敢えて正直な感想を書いたまで。ロースクール進学を検討している人には一度手に取ってもらいたい。


また,著者と,ご家族のためには非常にいい記念になった書籍だろう。私がこのブログを始めたのは,ちょうどロースクールに入学してから1年後くらいだが,本書を読んで,ロースクールに入る経緯や,入学当初の混乱について,忘れないうちに書いておきたい,と思ったくらいだ。