Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究会報告書へのコメント2

先日に続いて,報告書へのコメント第2段が公表された。


報告書1
http://www.soumu.go.jp/main_content/000097157.pdf

報告書2
http://www.soumu.go.jp/main_content/000097814.pdf


今回は20件の意見が公表されているが,前回以上に厳しい。法科大学院在学者,卒業者の意見もあり,興味深い。


ツイッターでも書いたが,法科大学院に関する風当たりは制度発足時(2004年当時)と比べても格段に厳しくなっている。


確かに,私の在学中も法科大学院生や,教育に関して厳しい意見があったが,実際の試験が行われておらず,また,法科大学院卒業者が実務に就いていなかったことから,想像の域を出ないコメントも多かった。


ところが,現実に法科大学院卒業者が実務に就き,逆に就けなかった者(三振者)が出るようになると,実務界からも批判が強まった。その内容は,「卒業者のレベルが低い」というものもあるが,「法曹志願者にとってあまりにリスクの高い制度となった」というものが中心であるように思う。


卒業者のレベル低下は,合格者を増やしたことの必然的帰結であって,おそらく旧試験を維持していても,合格者を増やせば同じことがあっただろう。


三振制,就職難,高額な学費などが,リスクを高める要素となったわけだが,「就職難」は,法科大学院制度とは関係ない。合格者を増やせば必然的に起きる問題だった。ただ,いろんな問題の矛先が法科大学院に向けられている。


ただ,法曹志願者全体数が減ったことは,明らかな事実。旧試験時代は,合格者が1000から1500人の頃には,受験者は50000人近くなった。受験資格は何も要らなかったため,いわゆる「記念受験組」もいたと思われるが,相当多くの若者が司法試験を目指していた。他方,法科大学院制度発足時に,法科大学院の統一入学試験である「センター試験」の受験者数は40000人くらいいたところ,数年で7000人くらいまで減った。新司法試験は,再受験者などもいるから,当面10000人くらいの規模で推移すると思われるが,それでも,平成10年代の水準から比べると,相当低くなった。それだけ法曹という職業の魅力が低下したといえる。不況時には,資格取得に人気が出るということにも反する。


リスクを(見た目上)減らす施策としては,(前のエントリの繰り返しだが)新司法試験の受験資格から「法科大学院卒業」というのを取ればよい。もうひとつ,三振制の撤廃。法科大学院在学中に受けることもできれば,リスクヘッジになるだろう(現実には,1,2年勉強しただけで合格するほど甘いものではないと思うが,1,2年目で本番の空気を味わうこともいい経験になるだろうし。


もう少しまとまれば,私もコメントしてみようか,と。