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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

勝又先生のこと

特定のプロ棋士のことをこのブログで語るのは失礼かなと思いつつ,昨日のNHK杯録画放映を見て思わず書きたくなった。


勝又清和六段は,超有名棋士ではないので,将棋ファンにしかわからないプロ棋士。また,将棋ファンには,将棋世界の人気連載「突き抜ける!現代将棋」の講師として有名なように,「序盤,戦法の知識に豊富で『教授』と呼ばれる」ということで知られているかと思う。昨日のNHK杯放映でも,そのように紹介されていた。


ただ,私にとっての一番の印象は,「子どもたちへの指導」である。たいていの子ども大会では勝又先生の姿を見かける。ボランティアのときもあるとのこと。プロ棋士は,みんな指導対局がうまいが,勝又先生の場合,一言では言い表せない神業を感じる。


そして,何より普及への熱意が感じられ,子どもたちの名前もすぐに覚えてくれる。大会で会う子ども,会う子どもに声をかけている。夏には暑中見舞いが届いて,家族そろって大変恐縮した。


そんな勝又先生が,今年のNHK杯では好調で,予選突破に続いて,ベスト16まで勝ち残った。1月9日放映の三回戦,相手は誰もが知る羽生名人。羽生名人は,トップ棋士ばかりを相手にしながらも勝率7割以上をキープしているだけあって,トップ棋士以外を相手にしたときは,まず取りこぼしがない。こう言っては失礼ながら,この対局を前に勝又先生が勝つことを予想する人はほとんどいないだろう。しかし,これだけ長男がお世話になっていることを思うと,これは応援せねばなるまい。


将棋の内容を詳しく語ることができないが,かなりの熱戦となった。珍しく形勢が二転三転し,解説の藤井九段も「これは完全に形勢が入れ替わりました(勝又先生が優勢に)」と断言する場面もあった。親子で,「勝又先生が羽生名人に勝つかも!」とボルテージが上がった。


NHK杯の放映枠は,1時間40分だが,10分から20分くらいの時間が余って,残りは感想戦が行われることが多い。ただ,本局は終盤が長く,放映時間ギリギリまで対局が続いた。結果は,羽生玉が香を取った手が,詰めろ逃れの詰めろとなって,羽生名人の勝ちとなった。応援する勝又先生だから,という贔屓目もあるかもしれないが,今まで見たNHK杯の対局の中で,1,2を争う面白さだった。


普段見る勝又先生の姿は,子ども好きで,大きな声の早口のおっちゃん,という感じだが,テレビの中の勝又先生は勝負師そのものだった。関東を中心に,「勝又キッズ」は相当たくさんいると思うが,今回の雄姿は,「勝又キッズ」たちの忠誠度がレッドゾーンに達するには十分だっただろう。