最近になってようやく,少しずつ家のCDをiPodにせっせと取り込んでいるが,とてもなつかしいCDを発見。
それは,自分たちが演奏しているもの。ライブ録音ではなく,自前の機材でスタジオ録音したものだ。
当時(1994年当時)は,デジタル録音の機材が出始めていたが,学生にとっては高嶺の花で,友人がアルバイト代を奮発して買った8トラックのカセットマルチトラックで録ったものである。確か,私はマイク関係,SHUREのSM58や,管楽器用のピックアップマイクを買った。
8トラックあるとはいえ,当時のバンドメンバーは10人もいたし,ドラムなどはステレオで2トラック使うし,コーラスで参加するメンバーもいたし,とてもじゃないけど8トラックでは足りない。何度もピンポン録音*1しなければならなかった。
当時は,メディアがカセットテープだったので,何度も撮り直ししたり,ピンポンすると,どんどん音質が劣化してしまう。どこで妥協するかというのがまさに死活問題だった。
ライブ録音ではないので,1曲録るのに膨大な時間がかかる。例えば,ベースのパートを録るために,5分の曲(まだこの時点ではドラムしか録音されていない)を聞きながら2,3回練習し,本番を録る。それを聴きながら,録りなおすかどうか判定する。録り直しとなれば,この作業を繰り返す。
そんな感じなので,1曲の1パートを録音するのに1時間かかることは当たり前。それが10数パートあり,さらに,全10曲。
学生で時間が腐るほどある時代でない限り,ありえない作業だった。みんなアルバイトを終えて,夜の11時くらいに大学の開いている教室に集まって,明け方までレコーディング作業を数ヶ月間,週3ペースでやっていた。電子楽器ならまだよいが,夜中にトランペットやサックスをキャンパス内で吹きまくるときもあった。
そうやって録り終えたマスターテープ。次にミキシング作業。次に,マスターをどんな媒体に保存するかが問題となった。
当時,CDに録音するという発想はなかった。MDは出始めていたが,ほとんどの人がプレイヤーをもっていなかった。しかし,カセットに録っておいても,いずれ劣化してしまうし,聞かなくなるだろうということで悩ましかった。
そんな折,よく利用していたスタジオで,音源を持ち込むとCDに焼いてくれるというサービスをやっていたのに飛びついた。しかし,1枚1万5000円。学生たちにはかなり重い負担だった(膨大な時間を費やすことに関しては何らの意識もしていなかったが)。しかし,せっかくだからということで,各自数枚オーダーし,合計でわずか20枚ほどのCDが製作された。
ジャケット写真は,写真館で撮影した。ブックレットは,当時使っていたMac LC630あたりで,Mac Drawか何かをつかって制作したように思う。写真を取り込むために,わざわざデジタルスキャナを購入した。1枚の写真を最大の解像度で取り込むと,内臓HDの容量よりも大きかったので,外付けHDとメモリを増設した。
学生生活の集大成のようなCDが完成したが,当初は何回か聞いたが,小恥ずかしいので,やがて全然聞かなくなり,数年後には存在すら忘れられた。
そのCDがラックの隅っこで見つかった。思わずiPodに取り込んで再生できることを確認し,10年以上ぶりに聞いてみた。うーん,懐かしいけど,やはり恥ずかしいことには変わりない。なんせ,全曲,私の声と,サックスの音が入っている。
*1:トラックが足りなくなったときに,例えば1〜6トラックを7,8トラックに録音して,1〜6トラックにさらに次の音源を重ねどりしていく方法。