Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

有償の感覚

助言,アドバイスといった無形のサービスに対して,フィーが発生するポイントというのは難しい。


たとえば,弁護士をしていれば,昔の知り合いと会った時などに,


「ちょっとこういうことで困ってるんだけど・・」


みたいな法的な相談を切りだされることがある。一般論を答える限りにおいて,「相談料」などを取ることはない。「会ったついで」でなくとも,知り合いからメールが来て,ちょっとした相談が書いてある場合などには,時間の空いている限りは丁寧に回答するようにしているつもりだ。


先日,とあるパーティで一人の若者と名刺交換した。ベンチャー企業の管理部門に就職したばかりのようだが,まだ社内の管理体制が不十分とのこと。しかし,何かお役に立てそうなことがあれば,と思って,「お困りのことがあれば気軽に聞いてくださいよ。お金がかかるときはちゃんととりますヨ(笑)」と営業トークをしておいた。


さっそく数日後,彼からメールが来た。ある取引を行うに際し,特定の契約条項をどう書いたらよいか,という相談だ。文面には明示してなかったが,「タダで教えて」ということは間違いない。


こういうところでの対応が重要だ,とばかり,それなりに丁寧に(といっても20分程度かけてだと思う)回答を準備した。全体の契約条項とのバランスもあるから正規の回答ではないけれど,たとえば私なら,こう書くといった数行の例文を添えて返信した。ただし,そこには「これは本来有償のサービスですよ(笑」とつけて。


すぐさま「有償のところ,無償で対応していただいてありがとうございます」とお礼メールが来たので,「あまり気にしないでください。またいつでもどうぞ。」と返しておいた。


そして,さらに数日後。同じ彼から今度は「教えてください」という長文メール。質問は丁寧に1,2,3・・とナンバリングまでしてあるし,中には外国法に関するものまで。当該ベンチャーでやろうとしているビジネスの根幹にかかわる相談といってもよい。メールを読むだけでも時間がかかる。


「具体的な背景などをお聞きしないと,答えられないので,一度弊所までお越しください。出向いてもよいです。」と回答したら,「時間もないので,今回は自力でがんばります。」という返信。


弁護士だって,営業行為もあるし,自分の勉強になる場合もあるので,ある範囲の相談には「お試し」として無料で応じることもある。個人的な男女関係,家族関係,近隣関係での悩みならともかく,ビジネスの話であれば,それによって収益を上げようとしているのだから,法的リスクをヘッジをするためにプロフェッショナルを使うのには当然コストが発生すると考えるべきだと思うのだが・・