Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

考える人

最近,将棋の解説などを読んで少しずつわかるようになってきたけれど,その分,プロ棋士のすごさに圧倒される。


3月9日は,C級2組の最終戦が行われた。C級2組は,昇級者3名。うち,2名は前回までに確定しており,残る1名を可能性が残る5名くらいで争われていた。私が注目したのは,その中の一局,▲佐藤慎一四段―△糸谷五段。糸谷五段が勝って,上位3名くらいが全員負けると昇級する,という状況だった。逆に佐藤四段は,ここで負けると,デビュー年でありながら降級点が付く可能性がある。実績から行けば,NHK杯の決勝まで進出するなど,勢いある糸谷五段に分がある。


しかし,この対局,途中から非常にもつれてきた。糸谷五段が早指しということもあり,終盤戦に突入しても,何時間もの残り時間があり,相当早く終局するのではないかとも思われた。


内容については語れないが,結果は,佐藤四段の勝ち。金星といってもよいかも。5勝5敗の五分で終了。


佐藤四段は,終盤でかなり長考した。そのときの様子について,当人のブログでは,

もう盤上に没頭し過ぎて自分の名前も忘れそうなくらい考えてました(笑)

http://satosin.bl0g.jp/aid=99564


と,すごい表現だが,ものすごく考えていたんだな,ということが素直に伝わる。


我々の職業でも,じっくり考える,ということはあるし,試験中などは息を止めて考えるときもあったが,「自分の名前も忘れそうなくらい」考えたことなどは一度もない(当たり前か)。


話は変わって,同じ前回のC級2組(9回戦)で豊島五段が昇級を決めた一番が,将棋世界四月号,リレー自戦記に掲載されている。そこでも,もう完全に勝勢となったところで,豊島五段は,71手目について,

1手勝ちを何十回も確認してトイレで顔を洗って,さらに何十回も確認して次の手を指した。


と書いている(146頁)。しかし,この一手に費やされた時間は,11分。11分で,「何十回」を2回も確認するなんて・・常人のできることではない。