Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

こんな日弁連に誰がした?

今,業界で話題の「こんな日弁連に誰がした?」を読み終わった。


こんな日弁連に誰がした? (平凡社新書)

こんな日弁連に誰がした? (平凡社新書)

法律家は,点在する証拠から過去の事実を経験則に従って推測し,ストーリーを作っていくという仕事なのだが,まさに本書の著者,小林正啓弁護士は,司法試験合格者数増加の背景や,法曹養成制度の変遷に関し,そのような作業をやったといえる。


私自身,法科大学院の入試がスタートする2003年夏までは,弁護士という職業についても,司法試験についても,ほとんど無知の状態であった。だから,それ以前に,法曹人口とか,司法試験合格者数についてどのような議論が行われていたのか知らなかった。ただ単に,国家施策として3000人合格に向けて法科大学院制度が発足した,その程度の知識である。


ロースクールに入ってしばらくするうちに,「昔は年間500人しか合格しなかった試験が,じわじわと増えて,今は1500人ぐらい」ということを知った。しかし,その経緯については,この本を読むまでほとんど知らない。


そんな状態で,本書を読んだので,「なるほどー」とうなづきながら一気に読みきった。日弁連法科大学院構想に賛成したのは,そのような事情があったからか,と。


というわけで,自分が所属している強制加入団体や,自分の職業に関わる制度の(わりと最近の)歴史について理解するには大いに役に立った。しかし,冒頭に述べたように,本書は,点在する証拠に基づいてストーリーを作ったものであるため,推論も多い。また,事実を淡々と整理したというスタイルの割に,弁護士,日弁連に対する自虐的な表現も多く,当時の関係者からみると異なる見方(アナザーストーリー)があるのは当然予想される。


そんな中で,先ほど,


http://www.fben.jp/bookcolumn/2010/03/post_2458.html


という書評を見つけた。こちらも,なるほどである。