Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

この制度の行方

今日は,以前にお会いしたT予備校の所長と会食。


この本↓に私のロングインタビューが掲載されたことがきっかけとなって,

http://d.hatena.ne.jp/redips/20090512/1242138915


夏に初めてお会いして,

http://d.hatena.ne.jp/redips/20090813/1250174147


受験生向けに講演をさせていただく,という縁に繋がった。

http://d.hatena.ne.jp/redips/20091108/1257685879


T予備校は,新司法試験の分野では大きなマーケットシェアを確保しているとのことで,この制度の現状,今後に関する所長の思いは非常に熱い。


最近,日弁連の会長選挙でも争点の一つになっているが,合格者数の増減の問題や,法科大学院の統廃合,教育方法について,各方面で議論がされている。どのような議論がなされているかよくわからないが,この制度の当事者であるロースクール生,さらにはロースクールを卒業して実務に就いた人たちの話が反映されているようには思えない。


新60期で,すでに2年,未修者が含まれる新61期(私の世代)で,ようやく1年の実務経験を終えたところである。私も含め,とにかくみんな,がむしゃらにやってきて,気づいたら1年たっていた,という状況だろうが,それなりに思うところがあるはず。たとえば,

  • ロースクールでこういうところをもっと教えるべき,教わりたかった
  • 「できない人」「弁は立つが書面は書けない」などと実務に就く前から批判されてきたが,実際はこうだった
  • ロースクールは学生を卒業させるだけでなく,こういうアフターフォローを行うべき


などなど。我々世代の声も制度設計,変更に反映させていかなければならないだろうなあ,と思いつつ,現実には何もしていないが。


私としては,上記の点に沿っていうならば,


法律家,特に弁護士がどのような思考によって生の事件を法的に取り扱っているのか。言うならば学校で学んだことと実務の関係はどうなっているのか,ということをロースクール在学中にもっと知る機会を与えたほうがよいと思う。エクスターンシップ,リーガルクリニックがその役割を果たすのだろうが,不十分だろう。何も,最先端のファイナンススキームなどを勉強する必要はなく,実務家の思考,マインドを学ぶことが,基礎的な法律を学ぶ姿勢に影響を与えるはずである。


また,修習時代までは,「新制度の学生,修習生の出来は悪い」などと何度も言われたが,実務に出てそんなことを言われたことはない(言われるような場面もないので当然か)。むしろ,問題あるなあと思える人は中堅からベテランと呼ばれるような人に多く,私が知る限りでは,必ずしも新制度によって生み出された法曹の実力が劣っていると感じたことはない。


アフターフォローについては,各所でも言われているが,財政的にも能力的にもあまり期待できない。今の状態でロースクールに多くを期待するのは酷かなと思う。


今日の会食でいろんな話をして,上記のようなことを思い出した。