Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

2兆3000億円の潜在需要

事務所に置いてあった電通のパンフレット。タイトルは「電通式 行列のできる法律事務所のつくりかた。」。


その中で一つ目に付いた個所がある。刑事を除く法務サービスの推計潜在市場として2兆3000億円,とあった。必ずしも「弁護士によるサービス」に限定したものではなさそうだが,仮に全国約30000人の弁護士でパイを分け合うとしたら,一人当たり,8000万円弱/年。そんなはずはないよなあ。


その内訳も一応の根拠とともに示されているが,なかなか突っ込みどころも多い。


たとえば,法律相談業務の市場が2400億円。その根拠は日本の人口1.2億人の20%が年に1回,1時間の法律相談を行う(1回当たり1万円と仮定)というもの。相続の市場も約1500億円。年間死亡者100万人少々の約10%が遺産分割調停を依頼するというもの。いずれも,ちょっと頻度が高すぎる。もっとすごいな,と思ったのが遺言執行の約4500億円や,遺言書作成の約3800億円。そんなにみんな遺言や相続の心配をしないかな。


これを見ると,企業法務系の市場は,せいぜい5000億円程度だが,相続,離婚など,家事系の市場はそれだけで1兆円規模になっている。んー,今からでも企業法務から,家事へ乗り換えようか,と(笑


まあ,既存業務の潜在市場を掘り起こすというのは大事なことだが,こういうのは大資本系(特に,最近テレビCMをやっている事務所など)が得意なので,なかなか零細事務所としては難しい。それよりはむしろ,これまでの弁護士業務の外縁部分を少しずつ広げて,ニッチなマーケットを開拓するほうがいいんだろうな,と思う。


この考え方は,社会人から弁護士に転じた人たちに共通するところが多く,前職の業界,業務と,現在の法律サービスの間で何かできることはないか,と考えている人たちは多い。


いずれにせよ,「行列のできる」事務所とはいわないものの,ちゃんとした自分のポジションを確立しておきたいものである。