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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

歴史上の著名人の商標

ちょっと前のニュースだが,吉田松陰高杉晋作らの登録商標について,取消決定が出されたとのこと。


http://www.asahi.com/national/update/0126/SEB201001250041.html


商標登録の要件は,商標法3条1項のほか,4条1項にも,不登録事由が列挙されている。このうち,第8号は,

8.他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

だが,ここでいう「他人」とは,現存又は現在する人をいうと解されているので,歴史上の人物は含まれない。


そうすると,「吉田松陰」らの商標登録を認めない理由は形式的にはないように見える。今回の取消決定は,第7号の

7.公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

が適用されたものと思われる。ただ,いわゆる「公序良俗違反」については,基準があいまいであるため,特許庁は自ら定めた詳細な商標登録基準,審査便覧で,この点について触れている。


http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyoubin/42_107_04.pdf


によると,

1.歴史上の人物名からなる商標登録出願の審査においては、商標の構成自体がそうでなくとも、商標の使用や登録が社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も商標法第4条第1項第7号に該当し得ることに特に留意するものとし、次に係る事情を総合的に勘案して同号に該当するか否かを判断することとする。
(1)当該歴史上の人物の周知・著名性
(2)当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識
(3)当該歴史上の人物名の利用状況
(4)当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品・役務との関係
(5)出願の経緯・目的・理由
(6)当該歴史上の人物と出願人との関係


とある。つまり,当該歴史上の人物そのものの評価だけでなく,出願人との関係,指定商品・役務との関係が重視されるようだ。