Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

修習前研修の要否

昨日は,修習生給与制の廃止について書いたが,ほかに弁護士会で修習生に関して話題になっていることとして,「修習が始まる前に補助的な研修が必要か」という問題である。


われわれの世代から,前期修習がなくなり,修習開始と同時に実務修習が始まることになった。そうすると,いきなり弁護士事務所に配属されても,「訴状の書き方が全く分からない」などということが起こりうる。指導担当の弁護士からしても,「それぐらい基本的なことから手取り足取り教える暇はない」ということになる。そこで,前期修習の復活を待ってられないから,修習開始直前ぐらいに,短期集中で修習生(予定者)に対して,弁護士会でドーピングできないかという話題が上がっている。すでに行っている弁護士会もあるようだ。


ただし,この議論になると必ず,

  • ドーピングの必要性は認めるとしても,なぜ,司法研修所でもなく,弁護士会がやらなくちゃならないのだ。
  • そもそも前期修習に相当する教育は法科大学院でなされるべきだったはずだ。
  • 数日間,集中的に叩き込んだとしても,身に付かないし,苦労する割に効果は期待できない。


などという意見が出る。いずれももっともである。それに対して,「必要論」の論理は弱いように感じる。


私自身も,そのような暫定的な支援策は必要ないと思っている。ただでさえ,2階建て,3階建てのいびつな法曹養成制度の構造になっているのに,その隙間にまた付け足すとなると,いつまでたってもシンプル化できないからだ。とはいえ,現状,第一クール弁護修習を受け入れる事務所・指導担当弁護士のご苦労を解消する即効策も見当たらないが。