法科大学院に入ってから,以前と比べて文章,表現,語法に気を使うことが多くなった。その傾向は刑事裁判修習に入ってから加速した。
例えば,「葛飾区」。
判決書に被告人の本籍や住所を書くことになっているが,何気なく「葛飾区」と書いたところ(印字したところ),指導担当の裁判官に
正式にはこの字じゃないんだよね。
と,指摘された。確かに
http://www.city.katsushika.lg.jp/aisatu/katsushikakunituite.html#katunoji
にあるとおり,正式な字は「葛」ではない。しかし,私のPC上では正式な文字を表示させることはできない。
人名によくある,「澤」「濱」「齋」「郄」などは,注意して使い分けたりすることもあるし,現にこうしてPC上で表示させることもできるのだが,「今」とか「藤」のような字にまで異体字が存在することは知らなかった。
そんなわけで,裁判所では外字がよく使われている。電子データよりも紙媒体がマスタとなるから,それはそれでよいのだろうけれど。
次に,「数回」について。
数回とは何回のことをいうのか。例えば,公訴事実中に,「○○の顔面を数回手拳で殴り」という記述があったとする。事実の認定は証拠によらなければならない(刑訴法317条)ところ,複数の目撃者によると「2回殴りました」「何回殴ったかわかりませんが,1回ではないと思います」「2回ぐらいじゃないでしょうか」という供述があった場合,証拠上認定できるのは,高々2回のような気がする。そのような場合に,そのまま「罪となるべき事実」に「数回殴り」と書いてよいのか。
「大辞泉」によると,「数回」とは「2,3回か5,6回程度の回数」とある。ただ,別の辞書では2が含まれていないケースもある。そうなると,やはり漫然と「数回」と書くべきではないのかもしれない。