Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

就職活動(2)

われわれロースクール1期生,2期生あたりの世代は,合格に対する不安に加えて,在学中から「職に就けるのか」という不安もかなり広がっていたように思う。


それは,

  • 合格者が急に増えて,収容する側の法律事務所のキャパがない
  • 新司法試験合格者の品質に対する疑いがあり,しばらくは採用を控える事務所がある
  • 同じ時期に就職する現行試験の合格者は,先に就職活動を開始しており,新試験の合格者が職を探し始めるころには,採用枠がかなり細くなっている


などという話を,あちこちで耳にし,弁護士を志望する者にとって,明らかに買い手市場になっていると考えられるからである。


そうなると,採用してもらおうという側の行動パターンとしては,必然的に,

  • できるだけ早く動こう
  • できるだけ多く手を出してみよう


という方向へ流れることになる。その結果,かなり異常な事態へと発展していく。


新試験に移行する前から,弁護士事務所への就職活動をする時期は年々早まってきたといわれている。それでも,少なくとも司法試験の合格発表後にならない限り,応募する側も動きようがなかったし,採用する側も「今年,試験を受けました」というだけの受験生と面接するようなことは通常はなかったと考えられる。


しかし,新試験に移行した2006年からは,司法試験受験直後,合格発表前から就職活動がスタートするようになった。それでもまだ初年度(2006年)は,一部の受験生と,事務所に限定されていたと思われるが,それが2年目の2007年になってグッと裾野が広がったようだ。来年以降は,さらにそれが拡大する可能性がある。


しかも,合格発表前であっても,単に事務所の説明会を開催したり,資料を配布したり,履歴書を集めたりするだけでなく,個別に面接したり,内定(内々定?)を出したりする事務所もあると聞く。当然,全員が合格する訳ではないので,不合格になるケース,任官・任検するケースも見越した上で採用側は対応しているのだろう。


私が合格発表前,とある事務所(弁護士数20名程度)の説明会に,様子見程度のつもりで応募してみた。事務所の規模からして,せいぜい新人弁護士は1〜2名程度しか採用しないと考えられる。だから,説明会といっても,5〜10人ぐらい集まるんだろうな,と思って行ってみたらビックリ。


40〜50人ぐらいが集まっていた。しかも,その事務所の説明会は,その日1回限りではなく,3回ぐらい開催されるそうだ。毎回その人数が集まるのかどうかわからないが,100人以上は履歴書・経歴書等を提示していると考えられる。その中で採用されるのは,1〜2名。


これは明らかに,司法試験に合格するより難関である。その現場を見るまでは,「まぁ,どこかには入れるだろうし,どこもダメそうだったら,昔の仕事を併行してやりながら自分1人で始めるか」などと大アマの考え方をしていたのだが,緊張感が湧いてきた。


おそらく,私以外の参加者も似たような感触を受けるであろうから,そうなると,「どこか1つでもいいから,とりあえず内定をもらわないと」みたいな考えに至り,さらに「できるだけ多くの事務所と接点を持とう」というアクションに移る。それがさらに一事務所に対する応募が増えて・・・という異常なスパイラルへと向かう。