Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

弁護士とコンサルタント

当ブログでは,たまにコンサルタントと弁護士の類似点,相違点について触れてきたが,弁護修習を経て気づいたことがある。


コンサルタントは,クライアント企業の問題点を指摘したり,解決案を提示したり,それを現実に実行に移すために支援したりする。そこで生じる疑問は,


「お客さんの組織,業務,業界のことはお客さんのほうがよく知っているはずなのに,どうしてコンサルタントはお客さんに価値が認められるの?」


というものだ。これは確かに難しい。これに対する答えとしては,


「外部の第三者からみたほうが,問題点が見えやすかったりするから」
コンサルティングファームには,同種の事例に関するたくさんの蓄積があり,それを応用できるから」
「外部の人間を入れるほうが,改革に対する抵抗がないから」


などと言われる。もちろん,これらも間違いではないと思うが,これだけではなんだか物足りない気もする。


コンサルタントの価値は,それだけじゃなくて,「問題発見,問題解決のための効果的な方法論を知っていて,かつ,その方法論に沿って実際に問題発見,問題解決する訓練を積んでいる」ところにあるんだと思う。


わかりにくい表現になってしまったが,例えば,ある課題を抱えている企業があって,それに対する解決策をみんなで検討しているとする。それなりにいくつかの案が出たが,すべて実践するリソースもなく,悩んでいるとする。


そういうとき,エイヤッで方向性を決めることは危険であり,仮に奏功したとしても,次に似たような課題が生じても教訓を生かすことができない。だから,「解決策としてはBでもCでもなく,Aを選択すべき。その理由は・・」と,論理的に採るべき選択肢を示すことができれば心強い。未来の結果を保証することは本来誰にもできないのだが,結果が正しそうであることは,適切なアプローチを踏むことで,ある程度は担保できる。


巷では問題解決の本,ロジカルシンキングの本などが流行っているが,現に多くのコンサルタントは,この種の本で紹介されるフレームワークを当然の前提とし,それに加えて業界,業種等の専門知識・経験をベースに,問題発見,問題解決を行っていたりする。


・・と書いたものの,現実にはかなり厳しい。いくら思考訓練をしても,基本はクライアントのビジネス業界という完全にアウェーの世界で仕事をしなければならないので,圧倒的にコンサルタントは不利である。お客さんの商売のことは,やっぱりお客さんが詳しいのである。がんばって考えても,「そんなのあたりまえ」の一言で片付けられることは日常的。


タイトルで掲げつつも,なかなか「弁護士」の話が出てこない間に長くなってしまったので,続きは後日。