Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

法曹になるための費用が高額化

先週の日経ビジネス(2007.10.22号)の「お金の学校」コーナーで,珍しく「司法試験」をテーマに,題記のコラムが掲載されていた。


通常,このコーナーではCFP等の執筆者が,クレジットカードとか,保険,金融商品などの解説を行っているが,なぜだか,先週は「司法試験」がテーマだった。執筆者は,行政書士の方なのだが。


その内容について言えば,個別に取り上げれば,突っ込みどころがいくつかある。中でも気になったのは,〜未修者として社会人が入学するとしても,合格率は既修者に比べて低い〜という事実摘示に続く,

ある予備校によると,未修者でも入学前に旧司法試験の択一試験に合格するレベルの知識を身につけることを勧めている。入学後に予備校に通うのは時間的に厳しいだろうから,なるべく事前に準備しておいた方がよさそうだ。


という部分については,目を疑った。旧試の択一合格レベルってことは,既修レベルってことではないのか?と。今後,ますます司法試験の合格率が下がるとしても,未修者が入学前に択一合格レベルになる必要はないことは間違いないと思う。まぁ,予備校がそうやって煽る気持ちもわからなくないけれど,制度趣旨にも明らかに悖るし,真実とも異なりすぎる。



このコラムに限らず,新司法試験や,法科大学院について,あちこちでマユツバモノの情報を見かける。怪しい情報(真実と異なる可能性が高い情報)ほど,発行部数の多い雑誌など,多くの一般人の目に触れる機会が多いという問題もある。


もっとも,現在の法科大学院,新司法試験の状態を見る限り,各大学での内情はバラバラで,混沌としており,予測可能性が低い。特定の学校関係者・学生から聞いた情報を,さも全国的傾向のように流布されている場合もある。そして,そういう極めて不安定な情報に基づいて,志望者となる学生や社会人が意思決定をしている(たいていは否定的な情報に基づいて回避する)。


この状態のままでは,司法試験合格者が3000人では多すぎる,という議論以上に,まともな人がこの業界に集まってこなくなる危険性がある。できるだけ,信用できる媒体を通じて,関係者・学生・卒業生自らが正確な情報を発信していかなければならない,と思う。