Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

未修者合格率

今年の司法試験は,未修者が初参入したことになるが,法務省の発表によれば,未修者の合格率は,1965分の635,すなわち約32%だったことになる。
(http://www.moj.go.jp/SHIKEN/SHINSHIHOU/h19kekka01-6.pdf)


ただ,ここでも学校間の格差はある。公表されている資料を見たところ,本学の未修者合格率は,73.9%(23分の17)であり,18人中16人の合格者を出した千葉大に次ぐ高率となった。意外なのは,東大・京大がともに50%を下回っていることだ。


合格発表後に,ちょこちょことネットのニュースやブログなどを閲覧していたところ,未修者で合格した人は,法科大学院入学前から法律の学習をしていたといういわゆる「隠れ既修者」が中心であるとか,「隠れ既修者」が多い大学が合格率が高い,といった推測がなされていた。


他の大学のことはよくわからないが,本学の状況を見る限りにおいては,この推測はほとんどあたっていない。


未修者の同級生には,確かに「隠れ既修者」と呼べる人はいた。ただ,「隠れ既修者」の定義にもよるが,入学時点で3年後の試験結果を左右しうるほどの優位性をもっていた人(つまり現行の択一試験に合格した経験があるぐらい高いゲタを履いていた人)は,本学では2名程度だったと思う。そのうちの1名は在学中に現行試験に合格してしまったから,新試験は受験していない。


もちろん上記以外に,入学前にすでに予備校の基礎講座を受講したことがある人や,法学部卒の人はいた(仮に「準隠れ既修者」とする)。入学直後で知識ゼロの私から見たら,いきなりすごい先まで進んでいるように見えたから,当時はずいぶん焦った。未修者って何も知らなくてもいいんじゃなかったの?と。


ただ,司法試験という山は,とても高い山だったので,その差は3年間という長い目でみればそれほど大きなものではなかったように思う。これは私の推測だが,準隠れ既修者のみんなも,早々に貯金を使い果たした感が生じ,常に気を引き締めていたんだと思う。


・・となると,隠れ既修者の割合が大学別未修者合格率を左右する決定的要因であるとはいえない。では,どこに差があったのか,となると,考えうるのは,(1)入学した個々人の素質・能力,(2)大学の教育・環境,である。


未修者の同級生は,私から見て,とても優秀・勤勉な人が多かった。ただ,東大だって,おそらく他の有名大だって,個々人の素質や能力は高かったはずである。だから(1)だけで片付けてしまうことはできないと思う。


そうなると,やはり(2)が重要な要素だと考えられる。もっとも,教育や環境が決定的要因だとすれば,大学によって既修と未修の合格率が逆転していたり,両者の差が大きく開いていたりすることに対する十分な説明はできないと思う。特に,本学では,2年次からはほぼ完全に未修・既修が同じ環境で育てられていたし。そうなると,(2)だけともいい難い。


結局,今年のデータからだけでは,断定的なことはいえなさそうである。翌年の結果も併せて考えれば,もう少しいろんなことがわかってくるだろうが,一方で,翌年の結果は,再挑戦する未修者の情報も混在してくるため,より分析が困難になりそうである(再挑戦組が多いと合格率が上昇するなどの反動が生じるかもしれない,など)。