Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

択一のインパクト

あらためて昨年の新司法試験の結果を眺めてみて,択一のインパクトについて考えてみた。


今まできちんと見たことはなかったが,新司法試験の合否は,

  • 択一の素点はそのまま(350点満点)
  • 論文は,公法200,民事300,刑事200,選択100の合計800点を,8分の14倍(つまり1400点満点)
  • 上記の合計点(つまり1750点満点)

で決まるという程度で考えていた。


得点分布を見ていて,公法では100点,民事では150点,というように,ちょうど真ん中のところで,受験者の累計割合が50%に達しているところからみると,何かの得点調整を行っているようだ。ちゃんと調べてみたら,思ったとおり,得点調整が行われていた。


おおざっぱにいえば,採点者間のブレをなくすため,各科目の素点を偏差値に換算し,それを合計した点が論文の得点となるようである。だから,偏差値50,平均に位置すれば,得点も半分になるというわけだ。


ということは,例えば200点満点の公法で,120点とった,ということは,偏差値60だった,ということを意味する。受験者の素点が正規分布に従ったとなると,偏差値30〜70の間に約95%の受験者が集中するから,200点満点の試験でも,ほとんどの受験者は60点〜140点の間に得点が集中する。事実上の80点満点の試験,というわけだ。


そこで,択一のインパクトを考えてみる。たとえば,択一対策が功を奏して足切りラインから70点ぐらい上回ることができたとする。択一の点を論文に換算するときは,逆に14分の8倍すればよいから,論文のスタート時点で40点のアドバンテージを(足切りギリギリだった人と比べて)得られる。


これを各科目に分配すると,公法系で10点,民事で15点,刑事で10点,選択で5点のアドバンテージになる。こうして分配してしまうと,択一で70点もリードしても,論文へのインパクトは小さいように思えるが,上述のように論文の点数は偏差値であるから,どの科目も偏差値5のアドバンテージになる。


偏差値5といえば,かなり大きい。しかも全科目で偏差値5だけゲタをはけるのである。もちろん,択一でそれだけの点数をとることが前提なのだが。


・・と,こんなことを考えるヒマがあったら,期末試験の勉強もやらなくては。