Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

帰納法による論証

先日,法律答案には帰納的な論証をもっと用いるべきではないか,という問題提起がなされたことについて少し触れた(http://d.hatena.ne.jp/redips/20061120/1164033836)。


その日のエントリにも書いていたように,その意図するところがよくわからないまましばらく経過していた。後日,同じ先生と話す機会があったので,「先日のおっしゃってた,帰納的論証の意味がよくわかりませんが」と尋ねてみた。


結論からいうと,お話を聞いてみても,まだ自分としては理解できていない。ということは,少なくとも,来年の司法試験での答案作成スタイルに影響が生じることはなさそうだ。


その場での説明によると,「Aについて,(条文にはない)Bも要件とすべきか?」という問題があったとする。その場合の論証について,私の理解したところでは,まず,「もしAについて,Bは要件ではないとすると,どうなるか」という問題提起をする。そこで,その仮定に基づくと,いかに不都合・不合理が生じるか,ということを論ずる。よって,「Aについては,Bも要件とすべきである」という結論を導出する方法のようだ。


この論証方法じたいは,論理的であると思うのだが,私が先生の説明を正しく理解したとすると,それは「帰納的」と呼んでよいのかは疑問である。どちらかというと,背理法なのではないか。ちなみに背理法は,Wikipediaによると,

背理法(はいりほう)とは、ある事柄 P を証明するために、P の否定 ¬P を仮定すると、矛盾(ある命題とその否定が同時に証明されること)が起きることを利用する証明の手法

である。


まあ,どうでもよいことなのだが。