Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

報酬の額

本日のビジローの講義では,渉外弁護士の生活,仕事について,興味深いお話を伺えた。


「どんな弁護士になりたいのか」ということをきちんと意識し,人生の目標を持って歩かない者は崖の淵を目をつぶって歩いているようなものだから,将来の弁護士像について,法律の勉強してるばかりでなく,しっかり情報集めもしなさい・・・という話の流れで,「渉外弁護士ってのは,いったいいくらもらってるんだ?」というような話に及んだ。少人数講義ならではの話題ともいえる。ある意味,つらい受験勉強を続ける学生たちを前に,「がんばればこれだけ報われるんだよ」というエサというか,発奮材料を与えたのではないか,とも思われる。


ここで具体的な額を書くことはしないが,私が以前在籍していたことのあるコンサルティングファーム(以下,コンサル)と比較してみる。なお,コンサルに関する情報は私が在籍していた頃の記憶に基づくものである。


まず,渉外弁護士の初任給。確かに高い。コンサルでいうと,中堅マネジャー職と同じくらいか。もともとコンサルも給与が高い職種と言われるが,渉外弁護士の初任給は,それをはるかに超える。


そしてパートナーの年収。これも高い。しかし,コンサルでも,日本オフィスで十指に入るぐらいのパートナーであれば,同等の年収があると思われる。


続いて,顧客への請求額(コンサルでは請求料の率・単価をbilling rateと呼んでいた,以下BR)。時間単価で比較してみると,渉外弁護士1年生のBRはコンサルのマネジャーよりは安いものの,5年目程度の中堅に相当するようだ。もっとも,渉外弁護士に関してはわからないが,コンサルについては,正規のレートをそのまま請求できるケースのほうが希で,discountしたり,実働時間から差し引いてチャージすることも多かったので,定価ベースでの比較はあまり意味がないかもしれない。


しかし,種々の話を総合すると,渉外弁護士1年生は,売上に対する自己の給与の割合は,コンサルよりも渉外弁護士のほうがだいぶ高い(搾取率が低い)ように思える。さらに,チャージャビリティ(総労働時間に占める顧客に請求できる時間の割合)は,おそらくコンサルのほうが高いということからすると,さらに搾取率の差は広がるようにも思える。このあたりは,業態が似ているとはいえ違うからコスト構造も当然異なるし,実態がよくわからないから,これ以上はなんともいえない。


このように給与や顧客への請求額には大きな違いがある両者であるが,共通する点がある。それは労働時間だ。どちらも老若男女問わず,ホントにたくさん働く。


その他にも,弁護士のキャリア,という話題で楽しい話があったが,また気づいた時に補足する。