Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

経営のことはわからない

ビジネスローコースに登場する渉外事務所のパートナー弁護士の先生方は,たいがい標題のような言葉を口にされる。


いわゆる「ビジネス弁護士」の職分はどこまでか,というのが気になる。そこで,講義後などに先生に聞いてみると,経営に関わる判断についてはかなり厳密に線を引かれているという印象を受ける。私からみて,かなり経営者としてのマインド,センスをも有するように思える先生であっても,「弁護士は経営のプロじゃありませんから」とおっしゃる。クライアントの前でもはっきりとそこは線を引く。


コンサルタントは,ちょっと違う(あくまで,私の知る限りにおいて)。もちろん,「経営コンサルタント」と名乗っておいて「経営のプロじゃありませんから」とか,「ITコンサルタント」と名乗っておいて「技術のことはわかりませんから」などとは口が裂けても言えない。さらに,コンサルタントはお客さんの前では「法律のことはよくわかりません」とか,「この業界のことは素人ですから」などとも言わない*1。「客前で『知りません』と言うな」ということを入社時から徹底的にしつけられる。唯一お客さんに教えを請えるのは,お客さん固有の業務内容,製品知識ぐらいのものである。


だから,例えば「これは,外注加工先に売って,買い戻す方式にすればいいじゃないですか?」と言ったときに,「でも,そんなことしたら下請法にひっかかるんじゃないの?」と,お客さんから言われて,「シタウケホウって・・?」と思っても,「かもしれませんね,確認しときます」などと言ったりする。少なくとも,「じゃあ,リーガルチェックは,そちらでお願いできますか?」という感じにとどめる。


どちらもプロのスタンスとして一理あると思うが,この違いはいろいろなところに原因がありそうだ。書き出すと長くなりそうなので,今日はいったんここで切ることにする。

*1:一流プレイヤーであれば,あえてお客さんのフトコロに飛び込むために自分を卑下する表現として使われる。また,クライアントとの信頼関係が固い場合も同様