本日の労働法ゼミのテーマは,労働者の退職後の競業避止義務である。
つまり,平たくいうならば,
- 会社をやめた後に,同業他社に転職して前職のノウハウを利用したり,新しい会社を設立した場合,前の会社に訴えられてしまうのか
- 転職前後に前の会社の同僚,後輩を引き抜いた場合,前の会社に訴えられてしまうのか
- 「退職後2年間は同業他社に就職しません」旨の誓約書などを差し出していた場合はどうなのか
- 訴える場合,損害賠償だけでなく,営業差止請求なんていうのも認められるのか
といったことが問題になる。
私がかつて所属していた業界は,上記のようなことが日常茶飯事であった。つまり,同業他社に就職する,後輩を引き連れて独立する,なんてことはよくあることだ。現に,私も最初の会社を退職し,先輩に誘われて同じ業界に属する会社設立に加わり,前の会社の後輩や同期にジョインするよう説得したこともある。ちゃんとした記憶はないが,「退職後2年間は同業他社に就職しません」というような趣旨の誓約書を差し入れていたかもしれない・・・
当時は法律の知識がなかっただけに,こうした行為をとっていたことについて,多少,「これってまずいことなのかなあ」などと思ったことがあったのだが,それが具体的にどのような法的効果を生じさせるのか,よくわかっていなかった。それだけに,後味の悪いやめ方をしない,会社の資料を持ち出さない,お客さんを奪うような行為はしない,といったことにずいぶんと気を使ったものだ。
実際に,こうした場合において,損害賠償が認められたり,退職金が支給されなかったりするケースというのは相当特殊な,背信的な場合に限られる。だから,普通,行われているような同業他社への転職だったり,友人,同僚を勧誘する行為が違法となることもほとんどありえない。そういう意味で,今回判例をいくつか読んでみて,「これぐらいやってしまうとマズイ」というラインがおおよそ見えたという意味で,大いに勉強になった。