Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

割増賃金の引き上げ

労働基準法の改正により,残業に対する割増賃金の最低基準が引きあげられる可能性がでてきた。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060610-00000104-yom-pol によると,

政府は10日、一定時間以上の残業に対する割増賃金の最低基準を引き上げる方針を固めた。現行の25%を40%程度にすることを検討している

となっている。現在は,労基法37条1項及び割増賃金令によって,時間外労働(8時間を超える部分)は最低25%増で,休日は35%,深夜の場合は25%となっている。この改正が通れば,深夜(22時以降)でかつ,時間外労働の場合には,40%+25%で,65%増しの賃金が請求できることになる(なお,深夜労働の基準が引き上げられるかどうかは,本記事を参照した限りでは不明だったので維持されると仮定)。


この趣旨は,安易に企業が残業を命じることを抑えようとするところにあるようだが,悩ましいなあと感じる部分もある。ホワイトカラーの場合,常に,残業代の支給には不公平や不透明性が生じるのが避けられない。つまり,明示・黙示の圧力によりサービス残業を強いられたり,手取りを増やすために不要な残業をする者が現れたり,仕事の遅い者が多くの賃金を手にしたりするなどの問題が多く生じるからである。


そこにきて,割増賃金の基準を引き上げることになれば,これまでサービス残業を強いられていた人たちは,より一層,その圧力が高まるだろうし,上記のようなゆがんだ状態は,より助長されるような気がする。