Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

内部統制

やはり,社会人出身ロースクール生としては,単に法律の勉強ばかりするだけではなく,これまでの経験を念頭に置きつつ勉強し,かつ,現在の社会の動きにもキャッチアップしていかなければ,と思う。


これは書いてみると簡単なことのようだけれど,どうしても勉強が大変だと,「世間の動き」についていけなくなる。最近,それを痛感したのが「内部統制」である。


会社法を勉強している者としては,大会社における内部統制システムの整備の義務化(会社法362条4項6号,5項等)を知らない人はまずいない。しかし,会社法の分野,もっと言ってしまうと司法試験のために必要な会社法の分野で,内部統制,といえば,この条文を指摘できて,せいぜい,大和銀行株主代表訴訟事件における「取締役会が大綱を決めて,チェックする義務」ということをボンヤリと理解しておけば,とりあえず乗り越えられそうな気がする。


しかし,実務の世界では,私が思った以上に,内部統制が盛り上がっている。内部統制と銘打ったセミナーを開けば,連日大入りのようだ。コンサル会社や,監査法人は,内部統制の仕組みづくりに関する提案と導入に忙しい。そして,ERPパッケージベンダーをはじめとする,ソフトウェア業界でも「このシステムを入れれば大丈夫!」という広告,営業が目立つ。もちろん,実際に内部統制を構築しなければならない企業の管理部門の方々は大変だろう。現実に,レポーティングの基準などを満たすためには,結構大変な企業もありそうだ。


こうした騒動は,個人情報保護法施行の前にも類似の状況が見受けられた。あの頃も,IT系ベンダーが,騒ぎに乗じてだいぶ稼いだのではないかと思われるが,営業する側が,あの法律の趣旨・目的や,個々の義務についてどれほど理解していたのかは,今思えばアヤシイ。だから,つられて無駄な投資をした企業も多かっただろう。個人情報保護法については,私がロースクールに入る前から話題になっていたが,当時の私は,新聞報道程度の知識すら満たしていたかどうか疑問である。


そう考えると,やっぱり法律や制度の趣旨・目的を正しく理解して,過不足ない投資ができるようにするには,単なる法律家の視点だけでも,IT,コンサル屋の支援だけでも不十分であり,そこをうまく架橋したいなあ,と思う次第である。