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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

採点基準公開の功罪

本日から講義が再開されたわけだが,いきなり,とある科目の中間試験が返却されたことによって,学生たちのお正月気分は吹き飛んだ。


その科目の先生は,毎回新司法試験を意識した(本人曰く「同レベルの」)問題を作成し,かつ,解説講義をわざわざ1コマ用意するなど,なかなか指導に意欲的である。今回は,採点基準を明確化し,それを公表した。具体的には,「xxについて言及してあれば+5点,yyの可能性を指摘すれば+5点・・」といった具合だ。


当然,こういう試みは学生にとってありがたい。返却された答案の点数の納得感も湧く。科目によっては,ほとんどコメントもないまま評価のみがつけられるケースも多いから,フィードバックに生かせず,困っていたところ,出題趣旨を理解するためにもよいと思える。しかも答案には,「5+5+15・・」というように,得点の内訳がそれとなく示してある。


ところが,こうした基準を公開されることによって,当然のように学生たちは自分の答案を読み直して「自己採点」に走ることになる。現に自分も,読み返して,「ここ,ちゃんと書いたつもりなのに,点数が加算されてないみたいだ」といった感想を抱くことになる。もっとも,考え直してみれば,それは「書いたつもり」に過ぎないのであり,表現力が不足していたから,採点者にリーチすることができなかったと理解するべきであろう。


案の定,解説講義が終了すると,学生が先生の前に長蛇の列をなす。内容は「ここにちゃんと書いてあるんだから点数を加算して」というようなもの。正直言って,先生は多数の答案の内容を,いちいち覚えているわけはないだろうから,そんな質問,要望に応えていくことに困惑していたように思う。


その後,先生と話をする機会があったが,「基準を公開したことを後悔したわけではないが,予想以上に採点内容を問う反響が多かった」と,疲れ気味であった。もちろん,公開する以上,それなりの覚悟をすべき,という考え方もあるだろうけれど,採点基準を明確化することは,学生にとってメリットがあることには間違いないのだから,あまり学生の側から,やいのやいの言ってしまうと,先生のモチベーションを削ぐという危険がありそうだ。