Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

プレテスト分析

いまさらという感じはするけれど,昨年8月に実施された新司法試験プレテストの結果(受験生の得点分布)を自分なりに分析してみた。


前提として,今回の結果が分析に値するか,というのは疑問がある。というのも,

  • 本番試験まで1年近くある時点で,3年生たちが本来の実力を発揮されたかどうかは疑わしい
  • 多くの大学では,期末試験を終えたばかりで,実力を出し切れていない可能性が高い
  • 論文試験はそもそも全員の採点を行ったわけではなく,500人の標本抽出の結果に過ぎない

など,考慮すべき点が多いからだ。とはいえ,現時点で具体的なデータとしてはこれしかないから,十分注目に値する。


というのも,短答のインパクトを知りたかったというのが分析のきっかけである。本番では,短答:論文は1:4で評価されることになっているようだが,勉強時間も1:4でよいかというとそうでもない。例えば,担当試験ではほとんど差がつかず,論文の差で合否が決定するのであれば,短答は足切りを安心して避けられるレベルを目指し,できるだけ論文の対策をしたほうが得策ということになる。


と,前置きが長くなったけれど,結論からすると,今回のデータを眺めてみても,あまり大きな収穫はなかった。


短答の場合,ちょうど真ん中(中央値)の位置につけると,166点である。そこから,がんばって上位40%の位置まで上れば174点,同様に30%の位置なら183点,20%の位置なら192点,10%なら206点だということがわかる。つまり,例えば現在上から40%の位置にいたとして,がんばって30%の位置までもっていくと,9点上乗せされることになる。さらに20%の位置までいけば,さらに9点上乗せされることになる。


論文の場合はどうか。詳細な分布が出ていないが,中央値は約380点。分布が粗いので,推定すると,40%の位置につければ約393点,上位30%の位置につければ約412点,上位20%なら約423点,10%なら約440点である。つまり,現時点で上から40%の位置にいたとして,30%の位置までもっていくと19点,さらに20%の位置までいけば,もう11点加算されることになる。


ところが,担当と論文は1:4での配点になるから,重み付けが違う。もともと,満点が350点と800点だから,論文は1400÷800,つまり1.75倍で評価される。だから,上記の論文の加算点に重み付けすると,上位40%の位置から30%の位置までもっていけば約33点,そこから20%までもっていけば,約19点加算されることになる。


以上の結果から,次のようなことがわかる。


仮に,現在,論文も短答も,全受験生の上から40%の位置につけるほどの実力があったとすると,そこからどちらも上位30%の位置にまで伸ばせば,得点は短答なら9点,論文なら33点増えることになる。言い換えると,短答で10点上乗せできる実力がつけば,上位40%から,30%以内の位置までいけることになりそうだ。


さらに,そこから合格率を考慮して,上位20%の位置にまで高めようとすると,短答なら同じく9点増えるが,論文だと19点しか増えない。そうすると,こんどは相対的に論文の重要性が増す。つまり,論文で19点(素点で約11点)上乗せできるようになれば,一気に10%の受験生をごぼう抜きできることになる。


やたらと長く書いてしまっただけに,わかりにくくなってしまった。しかも,一気に書いたから,どこか間違ってそうな気がするので,これぐらいにしておく。とにかく,論文の重要性が高いのは,あらためて明らかになったし,他方で「短答は,足切りスレスレでいいや」という考えは,リスクが大きい上に,重要で安定したな得点源を失うことになるだけに,改めたほうがよさそうだということもわかった。


追記:
ちょっと支離滅裂気味なので,また別の機会があれば落ち着いて考え直そうと思う。