Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

会社法で教えないこと

本来,過去の仕事の経験からすると,会社法は馴染み深いというか,接しやすい分野だと思っていたけれど,むしろイメージが湧かないというか,距離を感じることが多い。


まずもって新会社法では制度のバリエーションが多い。機関設計や,資金調達(株式発行)が特に。それぞれについて,本を読んだり,講義で説明を聞いたりするけれど,せいぜい「趣旨」ぐらいまでは理解できても,現場で必要とされる状況まではイメージできない。


例えば,資金調達の手段が多様化して,株式の種類も増えたし,株式と社債の区別も相対化してきている。多くの教科書や,説明では「多様な資金調達のニーズに応えるため」「議決権行使に興味のない株主のため」というような記述以上に突っ込んだ話はない。


私はファイナンスに強くないから,「で,これをいつどんな場合に使うの?」という具体的局面がイメージできない。講義で聞く説明としても,せいぜい,敵対的買収者に対する防衛のため,だとか,既存株主の支配力を維持したまま資金調達するため,といった程度。なぜ他のスキームは組めないのか,それでないとダメなのか。ちゃんとイメージできないから,また忘れる。


まあ,これは会社法に限った話ではなく,たとえば,民法でも,「債権譲渡の『異議をとどめない承諾』っていったいどんなときにやるの?」「抵当権の順位の放棄なんて,どんな人がするの?」っていう疑問に対する具体的な回答はあまりみない。