Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

法律とパッケージソフト

法律(特に会社法)と,パッケージソフト(特にSAP R/3などの業務ソフトウェア)は似ているところが多い。(長文です)


逆に,相違点からすると,法律は原則として日本で生活していく限り,必ず適用されるものだけど,パッケージソフトはユーザにならなければ,使わなくてもよい,という点が違う。

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法律には,強行規定任意規定があり,一定の枠内であれば,当事者が自由にルールを決められる。厳密にいうと,法律の規定がない範囲においては,自由なルールを決めたり,任意規定はデフォルトルールだから,好きなようにルールを設定したりすることもできる。


パッケージソフトには,カスタマイズ不能な領域と,カスタマイズ可能な領域があり,一定の枠内であれば,ユーザが自由に設定を変えられる。厳密にいうと,カスタマイズ可能な範囲においては,自由にアドオンを開発したり,デフォルトルールを,好きなようにコンフィグレーションすることができる。

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法律は,汎用的に,できるだけ多くのケースをカバーするように作られている。ある会社からみると,法律(会社法)は,「わけのわからん規定がたくさんあるから,わかりにくいんだよな。しかも,本当は認めて欲しいことが許されないから面倒だ」などということがある。


パッケージソフトは,汎用的に,できるだけ多くのユーザをカバーするように作られている。あるユーザからみると,「わけのわからん機能がたくさんあるから,重いし,高いしわかりにくいんだよな。しかも,本当に欲しい機能がついていないし」などということがある。

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法律の場合,解釈が重要であるから,立法者の意思が重要視される。だから,特に法律改正があった直後の立法者は,あちこちで引っ張りだこになる。


パッケージソフトは,設計者の意思が重要視される。だから,特に新しいバージョンがリリースされた直後は,設計思想を熟知する技術者は,あちこちで引っ張りだこになる。

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法律の場合,改正があれば経過措置が出されるものの,いやおうなしに対応しなくてはならない。


パッケージソフトは,ニューバージョンがリリースされても自分は無理に適用しなくてもよいから,法律と異なるようにみえるけれど,「そのうちサポートが切れますよ」といわれるから,事実上,いやおうなしに対応しなくてはならない。