Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

ふとい野郎

新しい判例をキャッチアップしていくことは重要だなあ,と感じることが多い。本日の民法の演習では,債権の準占有者に対する弁済(民法478条)に関する新しい判例をベースにした説例を少しだけ扱った。


説例の内容は,

XのA(銀行)に対する預金債権について,準占有者Yが払戻を受けた。XからYに対して不当利得の返還請求を行ったところ,「Yは自分が受けた払戻はAに過失があったから,払戻は無効で,Xの預金債権はまだ消滅していない。だから,Yの不当利得もないから,Xの請求には応じられない」という主張をした。このようなYの主張は認められるか。

というものだ。話を聞いていると,どこかで聞いた話であることに気づいた。昨年の今頃の債権総論の講義の中で,別の先生が新しい判例として紹介していた事例だ。直感どおり,そんなYの主張は信義則上受け入れられなかったはずである(最三判平16.10.26判タ1169-155)。


偶然にも,授業の一場面で先生が触れたに過ぎない判例をよく覚えていたものだったが,この判例が印象深かったのは,そのときの先生の説明で,


「このYってのはふとい野郎ですね」


という表現を使っていたのが妙に印象深かっただけのことである。