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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

単身赴任と不当労働行為

労使関係の実務,法律関係の用語に「不当労働行為」というものがある。これは,簡単にいうと,会社側が,労働者に対して労働組合の活動等を妨害するなどの行為を指す。山崎豊子の「沈まぬ太陽」の前半はこれが背景となってストーリーが展開する。


労働者が,会社からこのような扱いを受けた場合には,行政機関である労働委員会や裁判所に救済を申し立てることができる。例えば,組合の役員としてストライキを指導したことの制裁として僻地への配転を命じたり,組合の弱体化を狙って,その組合を分裂させるように画策したりするなどの場合がこれにあたる。


先日の労働法の講義の中で,「組合活動を積極的に行っていた人を単身赴任させたとき,その人が新婚間もなかったという事情ともあわさって不当労働行為だと認定された,なんてケースもあります」という話が出た。


今から×年前を思い出す。結婚式を1ヵ月後に控えていたとき,上司に呼ばれ(その上司は結婚式の主賓である),「来月から大阪にいってくんねぇかなあ?」と言われた。新居のローンの1回目が払い終わった頃だ。結局結婚から1年数ヶ月は週末のみ東京に戻るという生活だった。これって,上記の例に照らして考えれば,立派な不当労働行為?


もっとも,労働組合団結権とは関係ない世界で行われた単なる異動であるから,不当労働行為にはあたらないことは間違いない。


ところで,この「不当労働行為」という用語,おそらく訳語なんだろうけど,どうしても言葉からは,営業マンが外回り中に喫茶店でサボったり,アパレルの製造工程で針を混入させたり,というような行為がイメージされてしまう。会社が労働者を不当に扱うことなんだから,もうちょっと違う訳語を用意してもらいたかった。