Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

「理由」と「女系家族」

夏休みに「理由」(宮部みゆき)を読んだ。そういえば,昨年の夏休みは,まさか翌年にドラマ化されるとはつゆ知らずに,「女系家族」(山崎豊子)を読んだ。


ふたつの小説に一般的に見たら格別の共通点はないのだが,私にとってはどちらも直前にロースクールで勉強したことが小説の題材となっていたという点で共通している。しかも,敢えてそれを理由にして読んだわけでもなく,たまたま図書館で借りて読んでみたら,「おや,こんな法律問題がテーマになっていたのか」ということを気づいた点まで共通している。


女系家族では,胎児の認知(民法783条),胎児の相続(民法886条)が重要なテーマとなっている。他にも遺言執行者や立木の明認方法など,細かな民法トピックが出てきて驚いたものだ。


「理由」はもちろんミステリーとして楽しめたのだが,民事執行,とりわけ執行妨害が作品の背景として描かれている。民事執行法を前期に履修した者からすると,執行妨害の様子が具体的に書かれているので興味深い(ただし,法改正により,現行法とは微妙に事情は異なるが)。また,警察の初動捜査についても丁寧な取材に基づいて書かれているので,こちらも興味深い。


昨年は他にも「白い巨塔」と「沈まぬ太陽」(いずれも山崎豊子)を読んだ。これらは直後に勉強する科目のよい導入になった。「白い巨塔」で民事訴訟の手続と医療過誤訴訟に関する導入を勉強できた気がするし,「沈まぬ太陽」では労使問題,とくに不当労働行為について読んだことが労働法履修のきっかけの一つになった。


今年はさすがに昨年ほど小説を読んだりする時間が取れないのが悩ましいところ。