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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

義務履行確保

親は子の扶養の義務を負う一方で,子に無数の義務を課すことができる(ごはんを食べる義務,歯を磨く義務・・・)。

いってみれば行政と国民,市民の関係にも似ている(税を支払う義務,営業許可を得る義務・・)。そして,その義務に従わない国民に対して,行政は履行確保のため,法による根拠があれば

  • (1)直接強制:相手の意思を問わず無理矢理やり遂げること
  • (2)執行罰による強制:やらないと1日あたりいくらお金払え,という間接的な強制
  • (3)代執行:代わりに義務を履行し,経費を後から請求する(不法占拠物を運び出すなど)

などの手段が認められている。


この義務履行確保という面においても,親と子の関係と行政と国民の関係は似ている。それぞれの義務の内容にあわせて,親は(法の根拠がなくとも)適した手段を選択することになる。

  • (1)直接強制:風呂に入れる,保育園にいくなど
    • 肩にかついで連れて行くこともある。たいていは,泣きわめいて親も子も疲れるから,できれば使いたくない手段。
  • (2)執行罰:「手を洗わないと,オニがくるよ」など
    • 恐怖を認識し,条件関係を理解するようにならないとこの手は使えない。今のところ「オニ」のかわりに「オバケ」といっても同様の効果がある。なお,わが家固有の事情として,「オニ」のかわりに,なぜか「ロボットがくるよ」といっても同様の効果が得られる。
  • (3)代執行:おもちゃを片付けるなど
    • 本物の代執行と異なり,親が代わりに執行したとしても,経費の請求はできないのは当然のことである。

もちろん,こうした強権的な手法によるのではなく,自発的に履行をさせることがよいことはいうまでもない。そして,この手段の組み合わせは,子どもの成長によって変化する。

  • 第1段階はまったく言葉も理解しないから,(1)直接強制+(3)代執行しかできない。
  • 第2段階になると,(1)と(3)に加えて,(2)執行罰が導入できる。そして,インセンティブを与えることにより,自発的な履行の割合も少しずつ増える。
  • 第3段階は基本的に自発的な履行を中心として,ところどころで他の手段を織り交ぜることになる。


今は第2段階である。なお,排泄と睡眠だけはいかなる手段をもってしても,親の望むタイミングで義務履行を確保することはできない。