Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

企業法務

前回は,渉外弁護士の定義について悩んだが,それを解決するには「企業法務」をどのように定義するのか,という問題に当たってしまった。これも恥ずかしながら,よくわからない言葉だ。ロースクールに来る前,というか今でも,私の中での「企業法務」の定義は,「企業の法律問題を取り扱うこと」という極めて広いものである。


したがって,扱っていることのメインは契約書作成,および契約書チェック。クライアントの法務部もしくは法務担当者がチェックしきれないような新しいスキームの契約の場合などに法的観点からアドバイスをする,というもの。その他に現に私が見聞きした「弁護士に実際に相談していた企業法務マター」と思えるものとして,

  • 仕入先が,うちが振り出した手形をなくした,といって泣きついてきたんですけど,どうしたらいいんです?」
  • 「うちが卸した材料を加工したお客さんからクレームがあって,ドリルで穴を開けたら曲がって使い物にならなくなったから弁償しろ,って言うんですよ。うちが受け取ったのは10万円ですけど,加工賃300万円も払え,ってのは無茶ですよね?うちもメーカーから買ってるから,そこに払わすことってできないですか?」
  • 「構内で作業委託している業者が,荷物置き場としてコンテナを改造した簡易倉庫を持ち込みたい,って言ってるんですけど,どういう契約にすればいいです?」
  • 「USのネットを使った新しいサービスを日本に持ってくるんですけど,A社と,B社とうちとでJV作ろうと思います。契約書の雛形みたいなのありますか?」

など(メーカーや流通に勤めてたわけではないのに,ネタはそっち系が多い)。


しかし,どうやら「渉外事務所に行きたい」「企業法務を目指してます」という人がイメージしてるのは,上記のような業務ではなさそうだ。そこでイメージされているのは,ファイナンスとか,ガバナンスにおける法的アドバイスの領域ではないかと思う。確かに,ロースクールのカリキュラムで「企業法演習」という科目では,こういった問題が主に取り扱われているようなので,もしかしたら,そういった狭義の企業法務が正しい定義なのかもしれない。


コンサルティング業界でも,同じかもしれない。学生に「コンサルティングの仕事」を聞くと,経営戦略立案をはじめとする,いわゆる「戦略」の匂いのする部分のイメージがあるようだが,実際には幅広くて,「これもコンサルタントの仕事なんですか?」というものが多い。おそらく弁護士になっても,「これも弁護士の仕事なんですか?」というような,今では想像が付かないような仕事も多いのだろう。