Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

渉外弁護士

本学では,夏休みにエクスターンシップという随意科目がある。法律事務所などに一時的にお世話になって,実務の感覚を味わう,というもので,多くのロースクールが設けているらしい。どこでお世話になるか,というのは基本的に大学が開拓した受入先の一覧から,学生が選択し,先方と大学を交えて調整するという流れのようだ。


前置きはおいといて,どうやらその受入先の希望は,若い人を中心に「渉外事務所」が人気らしい。しかし,恥ずかしながらこの「渉外事務所」とか「渉外弁護士」というものの定義がよくわからない。「渉外(系)」というように「系」がついたりするときもある。「渉外弁護士」の定義について,いろいろ見聞きしたところ,以下のような説がありそうだ(説の命名は思いつき)。

  • A説(大手事務所所属説):だいたい50人以上の弁護士を抱える大手の事務所に所属する弁護士を指す。そして,そういう事務所を渉外事務所という。必ずしも,本人の行っている業務とは関わりない。
  • B説(外国企業相手説):所属する事務所の規模と関わりなく,外国系企業を主なクライアントとし,日本での企業活動や,国際取引についてアドバイスする弁護士を指す。
  • C説(企業法務全般説):主に大企業の顧問弁護士となって,企業法務を取り扱う弁護士を指す。国際取引に関わるとは限らない。

ずいぶんと定義が異なる。しかも各説の定義が単純な包含関係にあるわけではないから,広義説,狭義説,という定義もできない。


ちなみに,All AboutというサイトはB説をとっているようだ(http://kw.allabout.co.jp/glossary/g_shikaku/w001314.htm)。ずっと昔に聞いたときには,当時の定義はB説だったイメージがある。そのような事務所はたいがい大きな事務所で,定義は異なれども渉外弁護士といわれる人の範囲はA説と実質的に異ならなかったのではないか,と思われる。


他方,地方で弁護士をされている方のブログによると,C説に近い(http://lake.269g.net/article/151975.html)。最近聞いた話でも,比較的広義に解されているから,もしかすると今ではC説が多数説なのかもしれない。


しかし,C説をとると,今度は「企業法務」の定義が問題となる。それについてはまた別の機会に取り上げようと思う。