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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

証人尋問の休憩時間から@民事裁判傍聴

現職裁判官の教員が,裁判傍聴を企画してくださった。もちろん,一般市民が裁判所に行けば自由に傍聴できるのだが,事前に担当の裁判長から事件の概要・本日の公判の位置づけについて説明を頂けたこと,その後に公判内容について質疑を設けてくださったことなど,めったにない機会であり,大変有意義だった。


訴訟の段階としては,争点整理が終了し,集中証拠調べが行われる期日で,3時間で3人の証人(1名の当事者尋問含む)が行われた。事案としても,尋問経過も非常に興味深い内容で飽きさせないものだったが,その中で印象に残ったことを2つ。


ひとつ目は,代理人の力量。一口に弁護士といっても,いろいろいることはわかっていたのだが,このように尋問の上手・下手があるものか,と驚くとともに,尋問が下手だと勝てるものも勝てないな,ということを思い知らされた。


もうひとつは,休憩時間に原告が自分の代理人(弁護士)に,

「せんせい,質問に聞かれたことだけ答えろって,すぐに裁判長が遮るのはいけませんな。言いたいことをちっとも言えませんよってに,どこかに5分間でいいから,自分の言いたいことを言いなさい,って言ってくれる裁判長はおりませんかね」

と話していた。効率的な訴訟進行のためには,ルールに則って,聞かれたことにのみ答えさせるべきだと思うが,判決に対する当事者の納得感を生むためには,ガスを抜く,という意味で有効なのかもしれないな,と思ったので,後の質疑で裁判長に,こんな話があったことをぶつけてみた。

「それは代理人の力量だよ。中には代理人が主尋問の最後に『好きなことを少しだけしゃべって』ということもある。しかし,尋問のテクニックで,次々と言いたいことをしゃべらせるようなことはできるはず。つまらないこと,重要でないことを聞いていくから,当事者に不満が残るものだ」


「ちなみに5分で言いたいことを言うのは,よほどトレーニングを受けた人でないと難しい。かえって思い通りに伝えられずに不本意になることだってありうる」

なるほど,と思った。